金融商品取引法と不動産特定共同事業法の関係について☆

本日は、実務上深いかかわりがある「金融商品取引法」「不動産特定共同事業法」の関係について解説します。

 

一般的に「投資は自己責任」と言われますが、適切な投資判断判断を行うためには、「正しい情報」が必要です。

「金融商品取引法」は、名前の通り、有価証券を始めとする金融商品の取引が公正に行われることや、有価証券の流通の円滑化、資本市場がきちんと機能することを目的として、企業の情報開示(ディスクロージャー制度)や金融商品取引業者に関するルールを定めた法律です。

 

 

金融商品取引法のはじめには、規制の対象となる「有価証券」等についての定義が詳細に書かれています。

「有価証券」とは、債券や株券、投資信託など、財産的価値のある権利を表す証券や証書のことを言います。

(広義には約束手形や小切手、商品券なども印紙税法上の有価証券です)

法第2条で、国債、社債、株券、新株予約権証券、投資信託の受益証券などが代表的なものとして挙げられています。

 

他方、「民法上の組合契約や商法上の匿名組合契約に基づく権利」や「信託受益権」「合名会社や合資会社の社員権」などは、証票などが存在しないので直接的には有価証券に該当しません。

しかし、その性質上、資者保護の観点から有価証券と同じ規制を及ぼすべき必要があるため、金融商品取引法第2条2項の規定により、有価証券とみなされています。

 

そこで、「2項有価証券」「みなし有価証券」などと表現されますキラキラ

 

 

不動産特定共同事業法との関係でいうと、「不動産特定共同事業契約」は、「民法上の組合契約や商法上の匿名組合契約に基づく権利」に当てはまるので、金融商品取引法の規制対象になりそう・・・なのですが、金融商品取引法第2条2項5号ハで、特別に除外されています(ただし、特例事業者(SPC)と締結した権利は除外されておりません)。

 

【金融商品取引法 第2条2項5号】

民法(明治二十九年法律第八十九号)第六百六十七条第一項に規定する組合契約、商法(明治三十二年法律第四十八号)第五百三十五条に規定する匿名組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律(平成十年法律第九十号)第三条第一項に規定する投資事業有限責任組合契約又は有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第三条第一項に規定する有限責任事業組合契約に基づく権利、社団法人の社員権その他の権利(外国の法令に基づくものを除く。)のうち、・・・・・中略・・・・・次のいずれにも該当しないもの・・・・略・・・・・

 

ハ 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第一項に規定する保険業を行う者が保険者となる保険契約・・・・略・・・・又は不動産特定共同事業法(平成六年法律第七十七号)第二条第三項に規定する不動産特定共同事業契約(同条第九項に規定する特例事業者と締結したものを除く。)に基づく権利(イ及びロに掲げる権利を除く。)

 

「不動産特定共同事業に係る組合契約に基づく権利は、金融商品取引法から除外されていて、金商法のルールには縛られないのかあルンルン

と少し安心しましたねおねがいピンクハート(笑)

 

でも、投資家から資金(お金)を集めて不動産に投資し、その収益を分配する不動産ファンドである不動産特定共同事業は、金融商品取引法の規制対象となる集団投資スキーム(ファンド持分)と非常に近いものです。

 

そこで、不動産特定共同事業法では、「損失補填の禁止」「適合性の原則」など、金融商品取引法の規定の一部が準用されています。

 

【不動産特定共同事業法】

(金融商品取引法の準用)

第二十一条の二 金融商品取引法第三十九条(第三項ただし書及び第五項を除く。)及び第四十条の規定は、不動産特定共同事業者が行う不動産特定共同事業契約(特例事業者が締結するものであって、金銭(これに類するものとして主務省令で定めるものを含む。)をもって出資の目的とするものを除く。)の締結又はその代理若しくは媒介について準用する。この場合において、・・・・・略・・・・・と読み替えるものとする。

 

 

では、不動産特定共同事業法で準用されている、金融商品取引法の「損失補填の禁止」「適合性の原則」とは、どのようなルールなのでしょうか?

 

まず、「損失補填の禁止」とは、「投資信託など金融商品の売買等の取引で、投資家に損失が発生した場合に、事業者が穴埋め行為(損失補填)や、予定されていた利益が得られなかった場合に利益を追加することを禁止する」というものですドクロ

 

「損失が発生したとき、お客さんの損を事業者が負担するのがなぜいけないの?

投資家は損失がリカバリーされる方が嬉しいのではないの?キョロキョロ」と疑問がわきますね。

 

なぜ、損失補てんが禁止されるのでしょうか? 主な2つの理由があります。

丸レッド資本市場の公正な価格形成が阻害される。
丸レッド金融商品取引業者に求めれる市場の担い手としての責務に背き、投資者の信頼を損なう。

 

たとえば、

 

「うちのファンド商品を買ってください!絶対もうかります!もし、万一、損が出ても(価格が下がっても)、うちの会社が補償するから大丈夫!

というトークで勧誘を行い、多数の投資家から資金を集める事業者がいるとします。

 

 

当然、投資家は甘い言葉をささやく事業者に流れるでしょうから、事業者間の勧誘トークは徐々に加熱していくでしょう。

その後、集めた資金でなされた運用の結果で、巨額の損失が発生、事業者は倒産して、結局投資家への補償もなく・・・・ということに、なったら投資市場は混乱、大変な事態になることが想像されますアセアセ

 

したがって、事業者が投資家の損失を補填することは、基本的にNGです!

また、事業者の契約の相手方である顧客との間の損失補てんがだけでなく、第三者を介して行う損失補てん等も禁止されます。

 

 

そして、「適合性の原則」は、「投資家(顧客)の知識、経験、財産の状況、商品購入の目的に照らし て不適当な勧誘をしてはならない」、というルールです。

 

事業者は投資家に対して一律の対応を行うのではなく、各投資家の状況を総合的に考慮して、見合った勧誘をすることを求められます。

たとえば、投資経験もなく、余裕資金も少ない高齢者に対してリスクの高い商品を販売する、などの対応は相応しくありませんえー

 

 

それぞれの顧客の状況に応じた、きめ細かで柔軟な販売や勧誘が行うためには、投資家の年齢、所得、余裕資金、これまでの投資の経験などをヒアリングするとよいでしょう。もちろん状況は変化していきますので、その把握した内容は、適時更新するなどすることがおすすめですハート

 

「そういえば、投資商品を購入するとき、アンケートのようなものに回答したことがある」と思い当たる読者もいらっしゃるかもしれませんね。

 

不動産特定共同事業においては、金融商品取引法の準用だけではなく、「金融商品販売法」、「犯罪等による収益の移転防止に関する法律(犯収法)」「個人情報保護法」「反社会的勢力との関係遮断に向けた取組み(反社態勢)」など、様々な規制がかかります。

 

不動産特定共同事業法に基づくファンドの許可申請、実務においては、金融商品とも共通する様々な諸規制を踏まえたうえで取り組む必要がありますねウインクチョキ

コメントは受け付けていません。