星野リゾートの『REIT戦略』に学ぶファンド組成のポイント☆ 不特法実務セミナー(Web版)のご案内

4月に入り新年度となりましたチューリップ

もともとテレワーク的な業務(事務所での作業)が多いカピバラ行政書士ですが、最近はお客様とのミーティングもWeb会議に切り替わりつつあります。かに座

 

さて、本日は月刊フォーラム21で連載中「不動産特定共同事業(FTK)法のすべて」第6回目連載のご紹介です。

前回までの連載で解説したビークル(不動産ファンドの組成に用いられる主体・器)の特徴を踏まえ、今回は不動産ファンドの代表的なスキームとファンドの事業モデルについて解説しています。

 

不動産ファンドスキームの概要

不動産ファンドの組成に用いられるビークルは「投資法人」、「特定目的会社(TMK)」、「信託」及び「組合」の主に4つがあり、さらに「組合」にも様々なスキームが存在します。

 

不動産ファンド事業を行うには自社のビジネスモデルに最適なスキームを選択することが重要であり、その選択には不特法だけではなくファンド事業に係る法規制の全体像を理解することが大切です。

 

不動産投資ファンドの代表『REIT』

不特法の適用を受けないスキームには、RETTやTMKが挙げられますが、一般的になじみやすいのは上場REITではないでしょうか。

 

上場REIT(J-REIT)及び私募REITは投資法人をビークルとする不動産ファンドです。

 

以前も解説したとおり、ガバナンスや許認可の観点から投資法人を用いた不動産ファンド(=REIT)組成のハードルは高く、特に上場REITの場合は非上場の私募REITに比べて更に厳しい開示規制等を受けます。

 

上場・私募REITともに運用期間は無期限であり、金融商品取引所に上場する上場REITは次のような特徴があります。

 

丸ブルー投下資本の回収方法(出口)は市場での投資口の売却による

丸ブルー市場で随時売却できる高い流動性を有する

丸ブルー市場価格(取引所で取引され、成立している価格)を有する

 

他方、非上場である私募REITは、①市場売却できず期限の定めもないため出口は投資口の払戻し(投資法人による買取り)による、②投資法人に十分な資金がない場合は払戻しができないため流動性は低い、③市場で取引されないため市場価格が存在しないといった特徴を持つため、私募REITの投資家層は銀行や保険会社といった一部の法人投資家(機関投資家)に限られます。

 

星野リゾートのREIT活用モデル

運用期間の定めのないREITは、まずは上場して投資家から資金調達を行い、余剰資金で投資不動産を取得する「カネありき」の証券化と一般的に呼ばれます。しかし、実際にはREITの運営者(スポンサーと呼ばれる)が、自らのビジネスモデルを強化するため、スポンサーが所有する物件を投資対象としてREITを組成する「モノありき」の証券化が行われる事例も多く存在します。

 

「モノありき」型のREITのユニークな事例として、ラグジュアリーホテルの展開や老舗旅館の再生で知られる株式会社星野リゾートがスポンサーとなり、2013年7月に上場した星野リゾート・リート投資法人が挙げられます。

 

星野リゾートが運営会社ではなくREITを上場させたことの意義を考察するため、

①未上場のケース

②運営会社を上場させるケース

③REITを上場させるケース

の3つの選択肢を比較検討しましょうお願い

 

①未上場のケース

ホテルの運営会社が未上場のケースでは、運営会社には十分な資金がないので、旅館・ホテルといった物件は所有者(地主)から賃借することが一般的となります。

 

この場合、運営会社には、不動産の所有に伴うリスク(例:災害等による既存リスク、景気変動による価格下落リスク等)を回避できる物件所有に係る資本コストを負担せずに済むといったメリットがありますが、地主から賃貸借契約を不更新とされたり賃料増額を要求されたりすることで、多大なリソースを投入してブランド価値を高めた物件を喪失してしまうリスクを抱えますアセアセ

 

旅館・ホテル物件の喪失リスクを抑える方法として、運営会社自らが上場して資金を集め物件を取得・所有するケースと運営会社がスポンサーとなりREITを上場させ資金を集め物件を取得・所有させるケースの2つを見ていきます。

 

 

②運営会社を上場させるケース

運営会社が自ら上場して調達した資金で旅館・ホテル物件を取得し所有すれば、地主から賃貸借契約の不更新や賃料増額等を要求されることがなくなり、物件を安定確保することが可能となります星

 

しかし、上場した運営会社は不動産の所有リスクを負ってしまうとともに、物件の所有に必要となる資本コストを投資家に還元しなければならないという問題が生じますびっくり

 

また、運営会社は物件の所有に係る利益(賃借しないことによるコスト削減)を計上しますが、当該利益には運営会社において法人税が課税された後、投資家において配当金等の受取時等に更に法人税や所得税が課される「二重課税」が発生します。

 

③REITを上場させるケース

運営会社がスポンサーとなりREITを上場させ、当該REITが調達した資金で旅館・ホテルを所有すれば、REITが安定地主として機能し、運営会社は物件を安定確保することが可能となりますルンルン

 

また、不動産の所有リスクはREIT及びその投資家が負うため、運営会社は不動産の所有リスクを遮断して旅館・ホテル事業の運営に専念することができるとともに、運営会社は物件の所有に係る資本コストを負担する必要はありませんチョキ

 

むしろ、REITのスポンサーである運営会社が子会社等として設立した資産運用会社は、REITの資産運用の係る運用受託報酬を得ることができますコインたち

 

さらに、REITが投資家に支払った分配金はREIT(投資法人)において損金算入されるため、二重課税は発生しません。

二重課税が排除される分、投資家が実質的に受け取ることができるリターンが高まり、運営会社を上場させた場合よりも総合的な企業価値を高めることができますハート

 

以上のように、旅館・ホテル事業の運営会社自らが上場するよりも、運営会社がスポンサーとなって上場させたREITに不動産を取得・所有させる方により多くのメリットがあることから、星野リゾートはREIT事業に進出したものと考えられます爆笑

 

なお、星野リゾート・リート投資法人は資産規模150億円でスタートし、当初は星野リゾートグループ運営物件への投資のみを行っていましたが、2019年10月末現在の資産規模は1,556億円となり星野リゾートグループ以外の者が運営する物件もポートフォリオに組み入れています(図表4)。

 

図表4:星野リゾート・リート投資法人の資産規模の推移(2019年10月末時点)

出所:https://www.hoshinoresorts-reit.com/ja/portfolio/index.html(2020年3月1日閲覧)

 

スポンサーと投資家の利益相反

REITがスポンサーとの間で取引(不動産の売買や賃貸借)を行う場合、スポンサーと投資家との間の利益相反(例:スポンサーがREITやその運用会社に圧力をかけ、物件を相場よりも高い価格で売却してしまう結果、スポンサーが利益を得る一方、投資家が損失を被ること)を防止するための管理態勢を整備し、運用することが重要となりますウインク

 

上述の星野リゾート・リート投資法人は、利益相反防止策として「利害関係人等取引規程」において、同法人が利害関係人等との間で、物件の取得、譲渡、賃貸、プロパティ・マネジメント業務等の委託、売買若しくは賃貸の媒介委託又は工事等発注を行う場合には、法令及び利害関係人等取引規程の定め(例:投資法人が利害関係人等から物件を取得する場合、その取得価額は、利害関係人等でない不動産鑑定士が鑑定した鑑定評価額を超えてはならないこと等)を遵守すべき旨を定めています。

 

不動産ファンド事業への参入にあたっての留意点

今後、不動産特定共同事業を含む不動産ファンド事業への参入を目指す企業は、REITを活用して旅館・ホテル事業を強化した星野リゾートの事例のように、自らのビジネスモデルと不動産ファンド事業のシナジーを十分に検討した上で参入の意思決定を行うことが重要です。

 

例えば、現に不動産投資家向けに一棟アパート等の収益物件を開発・販売している会社であれば、不動産ファンド事業に参入することにより、物件の販売先(出口)に自ら組成したファンドが加わり、販路拡大をすることが可能となるでしょう。

 

ただし、自らのビジネスモデルとファンド事業のシナジーを追求すると、自社とファンド(投資家)との間の利害が衝突しやすくなるため、利益相反を防ぐための十分な措置を講ずる必要性が高まる点に留意しましょう!

 

 

オンラインセミナー「不動産特定共同事業(FTK)法コンプライアンス&ファンド組成実務」のご案内

先日3月19日に開催した「不動産特定共同事業(FTK)法コンプライアンス&ファンド組成実務」を収録し、Web上のオンラインセミナー用に編集した動画が完成しましたラブラブ

 

数多くの不動産特定共同事業(FTK)の許認可及びファンド組成に携わっているカピバラ行政書士が、FTK法に基づくコンプライアンス実務とファンド組成実務を、具体的な事例を交えながら解説します。

 

不動産特定共同事業ファンドの組成を検討している既存事業者の方
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