最近、不動産特定共同事業のクライアントから「土地を取得せず、借地上の建物だけを対象としてファンドを組成したい」とご相談が増えています。
土地を取得しないため、取得価格を抑えやすく、投資家に提示する利回りを高めやすいというメリットがあります。
そのため、ホテル、店舗、商業施設、簡易宿所、介護施設など、収益建物を対象とするファンドで検討されることがあります。
もっとも、借地上の建物を対象とするファンドでは、「建物だけを取得するからシンプル」とは限りません。建物の収益性や売却可能性は、土地を利用できることを前提としているため、借地契約の内容が非常に重要になります。
借地上建物ファンドの主なメリット
借地上建物ファンドには下記のようなメリットがあります。
・土地取得費が不要となり、ファンド総額を抑えやすい
・取得価格が抑えられるため、利回りを高めやすい
・土地所有者は土地を売却せずに活用できる
・事業者は少ない資金で収益物件をファンド化しやすい
・ホテルや店舗など、運営型不動産と組み合わせやすい
このように、借地上建物ファンドは魅力的なスキームです。
一方で、土地を取得しないということは、安定的な土地利用権が事業に大きな影響を与えます。
確認すべき主なポイント
例えば、駅前の収益ビルをファンド化する場面を考えてみます。
土地建物をまとめて取得すると価格が高くなりますが、土地は借地で、建物だけを取得できる場合があります。この場合、土地代がかからない分、ファンド総額を抑えることができ、利回りも高く見せやすくなります。
そのため、事業者としては「これは良いファンドになりそうだ」と考えたくなります。
しかし、ここで注意すべきなのは、建物の利回りだけではありません。
一番大事なのは、その建物がどのような借地の上に建っているのかという点です。
同じ「借地上の建物」でも、借地の種類によってリスクは大きく変わります。
例えば、普通借地権や旧法借地権であれば、一般的には借地人の保護が強く、土地を使い続けられる可能性は比較的高いといえます。もっとも、その場合でも、借地期間、更新条件、地代の変更、建物を売却するときの地主承諾などは確認が必要です。
一方で、事業用定期借地権の場合は、考え方が大きく変わります。
定期借地権は、期間が終われば土地を返すことが前提です。そのため、借地期間がどれだけ残っているか、最後に建物を撤去する必要があるか、撤去費用を誰が負担するかが非常に重要になります。

投資家に説明すべきリスク
借地上建物ファンドでは、利回りの高さだけでなく、その背景にあるリスクも説明する必要があります。
土地を買わないから、取得価格を抑えられる。
一方で、土地を買わないから、建物の利用は借地契約に左右される。
この点を、投資家に十分に説明することが重要です。
特に、次のリスクは説明しておくべきです。
- 借地契約が終了すると、建物を使い続けられない可能性があること
- 地代が上がると、収益が下がる可能性があること
- 地主の承諾がないと、建物の売却や転貸が難しい場合があること
- 定期借地権の場合、期間満了時に建物撤去が必要になる可能性があること
- 借地期間が短くなると、売却価格が下がる可能性があること
- 売却や再組成が予定どおり進まず、元本償還に影響する可能性があること
まとめ
借地上の建物を対象とする不特法ファンドは、土地取得費を抑えられるため、利回りを高めやすい有効なスキームです。
一方で、土地を取得しない以上、投資のリスクと収益性は「借地契約の内容」に大きく依存します。
特に、借地契約が「普通借地権」・「旧法借地権」なのか、「事業用定期借地権」なのかによって、注意すべきポイントは大きく変わります。
そのため、借地上建物ファンドを検討する場合は、物件取得前・募集開始前の段階で、借地契約の内容、建物の権利関係、賃料収入の整理、満期時の出口戦略、投資家への説明内容をしっかり確認することが重要です。
借地を対象としたファンドを検討される場合は、ぜひ、くるも事務所にご相談くださいね。
