休暇も明け、いよいよ1月は『東京』⇒『福岡』⇒『神戸』⇒『東京』⇒『札幌』と、日本全国で民泊&不特法セミナーが続くので、体調管理に気を付けたいです
今回は、最近ではコンサルティングのご依頼が増えている❝不動産特定共同事業法・開発型ファンド❞組成の留意点をご紹介します
開発型ファンドとは?
開発型ファンドは、①投資家から集めた資金で土地を仕入れ②その上に新築の建物の建設を行い③物件の完成後に運用・売却を行うファンドです。
最近「新築するビルやマンションの販売先として、不動産特定共同事業(FTK)を活用したファンド(すなわち、開発型ファンド)を作りたい」というご相談を、建設会社やマンションデベロッパーの方々から受けることが多くなっています。
開発型ファンドでは、通常のファンド(投資家から集めた資金で中古物件を取得し、運用・売却を行うファンド)の場合に比べ、投資家からの資金調達のタイミングの決定がより重要となります。
なぜなら、実際に収益(賃料や売却益)が入るようになるまでには、①土地の仕入れ、②建物の建設・竣工、③賃貸付け(賃借人・テナント)と段階を踏んでいくのに相応の時間と費用がかかり、キャッシュが枯渇しないよう気を付ける必要があるためです
ファンド組成者の立場としては、可能な限り早い時期からファンドで資金を募集し、土地購入や建設代金に充てたいと考えるのはもっともです
広告規制と事業実施の制限とは?
しかし、開発型ファンドは開発の失敗や工期の延長、完成物件の欠陥などのトラブルが生じやすく、完成物件を取得するファンドと比較してリスクが高いものと想定されます
そこで、FTK法は「広告規制」や「事業実施の制限」といった規制を設け、開発許可や建築確認など、一定の工事に必要な行政の許可後でなければ、広告や不特契約をしてはならないこととしています。
(広告の規制)
第十八条 不動産特定共同事業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第二十九条第一項又は第二項の許可、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六条第一項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物について不動産特定共同事業に関する広告をしてはならない。
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(事業実施の時期に関する制限)
第十九条 不動産特定共同事業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法第二十九条第一項又は第二項の許可、建築基準法第六条第一項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物について不動産特定共同事業を行ってはならない。
したがって、原則として確認済証が交付されるまでは、不動産特定共同事業の広告や契約の締結はできません
しかし、原則があるところには、例外があるもの。
実は、確認済証の交付前であっても、不動産特定共同事業を実施できるケースがあります。
法第68条「適用除外」の規定を読んでみましょう。
(適用の除外)
第六十八条 第十九条から第二十一条まで、第二十二条、第二十四条から第二十六条まで並びに第二十八条第二項及び第三項並びに準用金融商品取引法第四十条(これらの規定を第五十条第二項において準用する場合を含む。)の規定は、不動産特定共同事業者又は小規模不動産特定共同事業者が、特例投資家を相手方又は事業参加者として不動産特定共同事業を行う場合については、適用しない。
法第68条においては、事業参加者を「特例投資家」を対象とする場合は、法第19条の「事業実施の制限」は適用されないと書かれています。
(第18条の広告規制は、相手方を限定することが難しいため適用除外はありません)
インターネットやビラ広告は誰もが目にする可能性があることを考えると納得です
特例投資家とは、銀行や信託銀行といった一定のプロ投資家をいいます。プロ投資家のみを対象とすれば、開発型ファンドの初期段階(=建物の確認済証交付前)においても、土地の取得に必要な資金を集めることが可能です。
特例投資家(プロ)とは?
投資などの金融に関するルールといえば、「金融商品取引法」が頭に思い浮かびます。
金融商品取引法では投資家を、その知識や経験により「プロ」や「アマチュア」に区別して、プロを対象にするのであれば一定の説明義務を省略できたり、リスクが高い事業への投資が可能であるなどの場合分けを行っています。
(宅建業法においても、買主が不動産取引に精通している宅建業者である場合には、他人物売買の制限、クーリングオフ、手付額の制限などの買主保護の規定が除外されていますね)
FTKにおいても類似の考え方で、投資家を「適格特例投資家(スーパープロ)」と「特例投資家(プロ)」と「特例投資家以外の投資家(すなわち一般のアマチュア投資家)」に区別しています。
前述の法第19条の「事業実施の制限」について言えば、「特例投資家を対象とするのであれば、建築の確認済が下りる前でもファンドを募集してよいが、特例投資家以外を対象とするのであれば、確認済証交付後でなければリスクが高いからNG」としているのです。
したがって、なるべく早期の段階でファンドを募集するのであれば、対象者を特例投資家に限定したり、2段階ファンド(はじめは対象者を特例投資家に限定し、確認済証交付後に一般投資家を募集する)などの工夫が必要になります。
では、どのような投資家が「特例投資家」に当てはまるのでしょうか
特例投資家の定義は施行規則第4条に規定されています。
(特例投資家の範囲)
第四条 法第二条第十三項の主務省令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 不動産特定共同事業者
二 認可宅地建物取引業者(宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第五十条の二第二項に規定する認可宅地建物取引業者をいう。)
三 不動産に対する投資に係る投資判断に関し助言を行うのに十分な知識及び能力を有する者として国土交通大臣の登録を受けているもの(次号、次条第一項第二号及び第十一条第二項第十五号リにおいて「不動産投資顧問業者」という。)
四 特例事業者との間で当該特例事業者に対して不動産を売買若しくは交換により譲渡する契約又は賃貸する契約を締結している者であって、かつ、不動産特定共同事業契約の締結に関し、不動産投資顧問業者との間で不動産の価値の分析若しくは当該分析に基づく投資判断に関し助言を受けること又は投資判断の全部若しくは一部を一任することを内容とする契約を締結している者
五 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第三十一項に規定する特定投資家(同法第三十四条の二第五項の規定により特定投資家以外の顧客とみなされる者を除く。)及び同法第三十四条の三第四項(同法第三十四条の四第六項において準用する場合を含む。)の規定により特定投資家とみなされる者
六 有限責任事業組合契約に関する法律(平成十七年法律第四十号)第二条に規定する有限責任事業組合(次条第一項第五号において「有限責任事業組合」という。)のうち、組合員が前各号に掲げる者のみであるもの
中でも注目すべきは、規則第4条1項5号の「金融商品取引法に規定する特定投資家」です。
この「特定投資家」とは、「金融商品取引法におけるプロ投資家」を指しますが、簡単に言うと「金融商品取引業者に対して自分をプロ(特定投資家と)して扱うよう申し出を行い、金商法に則った同意を行った法人」のこと。
金融商品取引法(特定投資家以外の顧客である法人が特定投資家とみなされる場合)
第三十四条の三 法人(特定投資家を除く。)は、金融商品取引業者等に対し、契約の種類ごとに、当該契約の種類に属する金融商品取引契約に関して自己を特定投資家として取り扱うよう申し出ることができる。
金融商品取引業者にプロとしての申し出を行った法人である「特定投資家」=FTK法の「特例投資家(プロ)」なのです。
したがって特定投資家は、特例投資家として、FTK法第68条による様々な除外規定の適用があるということです
ちなみに、小規模不動産特定共同事業においても、特例投資家は出資額100万円以内の制限が除外されるので、1億円も出資可能です。
不動産投資を行う上で、自分の法人を持っているという投資家も多いことと思います。
投資とは、自分の投資志向、知識、経験に適合したものを自己責任を原則として行うもの
金商法上のプロ成り(=特定投資家へ移行することの申し出)を行い、FTK開発型ファンドに参画するという、不動産投資の幅が今後広がっていくかもしれません