厚労省が「宿泊サブスク」(定額泊り放題)を『違法』判定!新ビジネスを促進する法規制のあり方とは?

不特法の基礎を全7回で解説!「不特法メルマガ講座」を始めました!

お申し込みは、こちら

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。

 

こんにちは、カピバラ好き行政書士
不特法アドバイザーの石井くるみですハムスターハムスター
お盆明けの2021年8月17日、
「グレーゾーン解消制度」で照会されていた

宿泊サブスクサービス
(空き家定額泊まり放題サービス)について、

厚労省が「違法」の判定を下しました。

LINK:新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表

 

「グレーゾーン解消制度」とは、
新ビジネスに係る法令の適用関係について、
行政庁が事前回答する制度です。

今回、グレーゾーン解消制度において
「宿泊サブスクには旅館業法の適用はない」
旨の照会が行われましたが、

厚労省の回答は

「宿泊サブスクは旅館業に該当し、
したがって旅館業法が適用される」

というものでした。

すなわち、
同法の許可なしで提供される
宿泊サブスクは「違法」と
判断されたことになりますキョロキョロ

宿泊サブスク=旅館業の理由

宿泊サブスクが旅館業に該当する理由は、
次の4つの要件を全て満たすためです。
①施設に利用者の生活の本拠がないこと
②利用者から、宿泊料を受け取ること(有償性)
③宿泊サービスの提供が継続反復的に行われること(継続反復性)
④社会性をもって宿泊サービスを提供していること(社会性)

詳しくは、以前ご紹介をした
当事務所の下記ブログをご参照ください。

「定額で1泊から日本全国住み放題」の”ADDress” 複雑な旅館業法との関係は!?

新サービス「宿泊サブスク」は違法? ADDressが直面する課題とその理由…2/5日経新聞より

新ビジネスを促す規制の在り方とは?

近年、IT化が急速に広がり、
生活、働き方、エリアが多様化し、
「賃貸」と「宿泊」の垣根は
低くなっていることを感じますうずまき

ポストコロナ時代の観光産業の復活を見据え、
宿泊サブスクを普及させていくためには、
どのような規制の見直しを行うべきなのでしょうか?

ここで、私はぜひ、
「特区民泊の全国展開」
をイメージした
住宅宿泊事業法(民泊法)の
改正を提案したいと思います。

 

特区民泊とは?

 

特区民泊とは、「国家戦略特別区域法」に基づき
営まれる民泊(住宅を活用した宿泊サービス)です。

特区民泊の概要は、次の内閣府の資料にまとめられています。

以下、特区民泊の特徴を詳しく見ていきましょうウインク

 

特徴1 旅館業法の規制を受けない
住宅に滞在する利用者の滞在期間が1ヶ月未満の場合、
旅館業法の規制が適用されます。

 

同法の許可を受けずに、
住宅を1ヶ月未満の期間で
利用者に提供することは、違法行為です。

ただし、特区民泊を実施している地域で、
都道府県知事等の特定認定(許可)を受けた場合は、
旅館業法の適用が除外され、
合法的に住宅で宿泊サービスを提供することができます
(国家戦略特別区域法13条5項)。

 

このような法的な仕組みは、
住宅宿泊事業法(民泊法)の場合と同じです音符ルンルン

すなわち、住宅宿泊事業法(民泊法)
に基づく届出をした場合は、
旅館業法の適用が除外され、合法的に
住宅で宿泊サービスを提供することができます(民泊法3条1項)。

 

特徴2 衛生管理や苦情対応の義務が課される
特区民泊を営む事業者は、
①施設の衛生管理、
②滞在者名簿の備付、
③近隣住民からの苦情対応など、
民泊を適切に営むための義務を負います流れ星

 

事業者がこのような義務を負うことは、
住宅宿泊事業法(民泊法)に基づく届出をした場合と同じです。
特徴3 最低宿泊期間の定めがある
特区民泊では、3日から10日の範囲内
自治体が条例により定めた期間が最低宿泊期間となり、
それより短い期間で住宅を提供することは禁止されますバツレッド

 

たとえば、自治体の条例で「3日」が定められた場合、
最低宿泊期間は2泊3日となります。
この場合、1泊2日の期間で住宅を提供することはできません。

 

このような最低宿泊期間の定めは、
住宅宿泊事業法(民泊法)にはありません。
特徴4 宿泊日数の上限がない(365日の稼働も可)
特区民泊では、住宅宿泊事業法(民泊法)と異なり、
宿泊日数の上限がありません。

そのため、特区民泊の施設は、
年間365日稼働させることが可能ですピンクハート

特徴5 実施地域が制限される
特区民泊は、国家戦略特区の指定地域であって、
かつ特区民泊を定めた区域計画が
内閣総理大臣の認定を受けたエリアでしか営むことができません。

 

2021年8月現在、特区民泊を営むことができるエリアは、
東京都大田区、大阪府、大阪市、北九州市、
新潟市、千葉市、八尾市及び寝屋川市のうち、
指定された区域に限定されます。

 

ポストコロナ時代における民泊法改正の提案

それでは、住宅宿泊事業法(民泊法)を
どのように改正すべきでしょうか??

当事務所は、ポストコロナ時代の観光産業の回復を見据え、
次の通り、住宅宿泊事業法(民泊法)の改正を提案しています。

【住宅宿泊事業法の改正提案】

①各自治体は、条例で、区域を定めて、「一定の期間」
を定めることができることとする。

②「一定の期間」以上の期間における宿泊日数は、
180日にカウントしないこととする。

③「一定の期間」は「7日」以上の期間として定める。 

たとえば、ある自治体が、1~2週間程度の
長期リゾート滞在のニーズが見込める区域について、
住宅宿泊事業法(民泊)条例で「7日」を定めたものとします。

すると、その区域で6泊7日以上の宿泊を受け入れた場合、
その期間における宿泊日数は、年間180日の上限にはカウントしません。

 

結果、この区域では、1週間以上の長期滞在客を受け入れることで、
年180日を超えて住宅宿泊事業法(民泊法)に基づく
民泊を営むことができますOK

 

具体的な法令の定めに落とし込む場合、
住宅宿泊事業法(民泊法)に
次のような条項を追加することが考えられます下矢印

この改正案をすすめる理由(5つのメリット)

 

当事務所がこの改正を提案する理由は、
次の5つのメリットが存在するためですニコニコキラキラ

 

メリット1:自治体の裁量により規制緩和を決定できる
2018年の住宅宿泊事業法(民泊法)の導入当時は、
全国各地の自治体から大きな反発が起きましたアセアセ

 

住宅宿泊事業法(民泊法)は、
それまで違法営業が蔓延していた民泊を
全国的に解禁するドラスティックな規制緩和であり、
かつ、自治体に与えられた民泊を制限する裁量は限定的であったため、
民泊に反対する住民が多い自治体からは特に大きな反発が起こりましたプンプン

 

この点、私が提案する改正案は、
長期滞在を年180日の日数にカウントする/しない
の裁量を自治体に委ねているため、
2018年当時と同レベルの反発は起きないと予想されますグッ

 

規制緩和をしたい自治体にのみ、条例を作る自由を与える。
民泊法には、地方自治の精神を重んじる、
柔軟な法律になってもらいたいと思いますラブラブ

 

 

メリット2:特区民泊と同じ「通年民泊」を全国展開できる
私が提案する改正案により、
「一定の期間」以上の期間における宿泊日数を
180日にカウントしないことで、
特区民泊と同等の制度を、日本全国で展開できるようになります。

 

これまで、特区民泊を導入してみたいけれども、
国家戦略特区の指定地域ではないという理由で
導入を断念してきた自治体にとっては、
住宅宿泊事業法における民泊条例を作ることで、
特区民泊と同様に、年180日を超える民泊を行うことが可能となります!

国家戦略特別区域法の制約なしに
通年で民泊を営めるにようになることは、
観光や宿泊による産業振興を目指す地域の自治体にとっては
大きな追い風となるでしょうルンルン

 

 

メリット3:建築基準法等の諸法令との整合を保つことができる
住宅において「一定の期間」以上の期間における滞在を認めることと、
建築基準法や消防法といった関連諸法令との整合性については、
特区民泊の制定時に理論的な整理が図られています。

 

私が提案する住宅宿泊事業法の改正案では、
「一定の期間」以上の期間における滞在が
無制限に認められることとなりますが、
その場合における諸法令との整合性は、
特区民泊における整理を援用することで解消することができますチョキ
(詳しくは拙著『民泊のすべて』P41~50を参照)。

 

なお、特区民泊の制定当初、最低滞在期間は
「7日から10日の範囲内」とされていましたが、
2016年10月に更なる規制緩和を図る目的から法令改正が行われ
「3日から10日の範囲内」とされました。

 

全国的に2泊3日以上の滞在を「住宅」扱いとして
年180日のカウントから除外することは
社会通念上受け入れられない可能性が高いと考えられることから、
私が提案する改正案では「7日」を最低期間としています。

 

仮に私の改正案が実現した後も、特区民泊の実施地域では
「3日」を最低期間とする民泊営業が認められる点で、
国家戦略特区としての優位性が残ることとなりますピンクハート

 

 

メリット4:長期滞在により、地域に高い経済効果をもたらす

 

観光によりもたらされる経済効果は、
旅行者の滞在期間が長いほど高いとされています。

 

この事実を踏まえ、観光庁は、
訪日外国人旅行者の長期滞在と消費拡大を目指すため、
「上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会」を設置し、ポストコロナ時代を見据えた今後の観光戦略の策定を進めています。

 

この点、私が提案する改正案は、
民泊法に基づく施設における6泊7日以上の長期滞在を促し、
地域に高い経済効果をもたらすことが期待されますコインたち

 

 

 

メリット5:宿泊サブスク等の新ビジネスを促進できる
当事務所が提案する改正案により、月額料金を払うことで
全国の空き家や別荘などの民家に1週間単位で宿泊できる
「宿泊サブスク」といった新しいビジネスや、
旧来から存在する「ウィークリーマンション」が
法の規制下に置かれ、適切な成長が促されることが期待されますうずまき

 

宿泊サブスクは、旅館業法に基づく許可を受けない住宅に
利用者を短期(1ヶ月未満)で滞在させることの違法性が、
一部の保健所から指摘されていますもやもや

(参照:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68848330U1A200C2EA1000/)

 

また、厚生労働省の通知により、
利用者に1週間単位で部屋を提供するウィークリーマンションは
旅館業法の適用を受ける旨が示されていますが、
現実には、同法の許可を受けていない“違法”
ウィークリーマンションが少なからず存在するといわれています炎

(参照:https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta0406&dataType=1&pageNo=1)

 

この点、当事務所が提案する改正案により、
たとえば、住宅宿泊事業法に基づく条例で
「7日」が定められた区域においては、
民泊法に基づく届出を行うことで、
年180日の制限を受けずに宿泊サブスクや
ウィークリーマンションを営むことができるようになりますウインク

また、これらの事業が民泊法の規制下に置かれることで、
施設の衛生管理、滞在者名簿の備付、必要な消防用設備の設置など
「人を宿泊させる営業」に要求される最低限の基準を満たす、
適法な事業が遂行されていくことが期待されますキラキラ

 

そして、宿泊サブスク等の新ビジネスが健全に成長すれば、
サービスの利用をきっかけとして、

都市と地方に複数の拠点を置いてリモートワークをしながら生活を送る
「二地域居住」「多拠点居住」といった新たな生活スタイルや、
長期滞在先でリラックスしながら仕事を行う「ワーケーション」といった
新たな仕事スタイルの普及にもつながっていくでしょうピンクハート

空き家の利活用や生活様式の多様化といった社会課題の解決のためにも、
柔軟な法改正が行われることに期待したいです照れキラキラ

コメントは受け付けていません。