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さて、本日は不動産特定共同事業法の平成29年改正で新設された『小規模不動産特定事業』に関して嬉しいニュースのお知らせです
それは・・・
小規模不動産特定共同事業者の登録要件である『業務管理者』になれる人材を増やすため、主務大臣が指定する実務講習が本年6月より開催される見通しとなりました
この実務講習は、日本ビルヂング経営センターが、株式会社価値総合研究所及び一般財団法人日本不動産研究所に委託して行われる予定となっています
小規模不動産特定共同事業:指定講習を申請 「ビル経営管理講座」に新たな講習を追加
『業務管理者』とは
不動産特定共同事業の許可や、小規模不動産特定共同事業の登録を受けるためには、人的要件として、一定の資格を持った『業務管理者』を設置しなければなりません。
宅建業でいうところの“専任の宅地建物取引士”といったイメージです。
ところが、この『業務管理者』になるための要件がなかなか厳しいのです
不動産特定共同事業法の条文を見てみましょう
不動産特定共同事業法
(業務管理者)
第十七条 不動産特定共同事業者は、事務所ごとに、第二十四条第二項、第二十五条第二項及び第二十八条第三項の規定による業務のほか、当該事務所における次に掲げる業務の実施に関し必要な助言、指導その他の監督管理を行わせるため、その従業者であって宅地建物取引業法第二条第四号に規定する宅地建物取引士であることその他主務省令で定める要件を満たす者を置かなければならない。
不動産特定共同事業法施行規則
(業務管理者の要件等)
第二十一条 法第十七条第一項の主務省令で定める要件は、次の各号のいずれかに該当する者であることとする。
一 不動産特定共同事業の業務に関し三年以上の実務の経験を有する者
二 主務大臣が指定する不動産特定共同事業に関する実務についての講習を修了した者
三 第一号に掲げる者と同等以上の能力を有すると認められることを証明する事業として、次条から第二十四条までの規定により国土交通大臣の登録を受けたもの(以下「登録証明事業」という。)による証明を受けている者
まず、不動産特定共同事業法17条1項で、業務管理者は宅地建物取引士であることが必要とされています。
さらに、その他主務省令で定める要件として、施行規則21条1項において、①不動産特定共同事業の実務経験3年以上を有する者、②主務大臣が指定する実務講習を修了した者、又は③証明登録事業による証明を受けた者、のいずれかに該当することが必要とされています。
これから不動産特定共同事業を始めたい会社の場合、従業員の中に①の3年以上の実務経験を持っている人は、まずいないですよね
また、②の主務大臣が指定する実務講習は、これまで一度も開かれたことがありませんでした
そのため、これまでの実務では、③証明登録事業による証明を受けた者として、(a)不動産証券化協会認定マスター、(b)ビル経営管理士、又は(c)不動産コンサルティングマスターのいずれかの資格を有する従業員を雇用するか、経営者自身が資格を取得して、許可/登録申請を行うことが一般的でした。
それがこの度、小規模不動産特定共同事業を対象とする②『主務大臣が指定する実務講習』が開催される運びとなったのです
「業務管理者の資格要件を満たす人材を見つけることが難しい」という会社はもちろんですが、「業務管理者の資格要件を持つ人材が、会社の代表取締役のみ」というケースも、業務分掌・社内体制の整備のために業務管理者の資格を持つ人材を確保できるチャンスが増えるとことは非常にGood Newsです!
(a)不動産証券化協会認定マスター、(b)ビル経営管理士、(c)不動産コンサルティングマスターは、いずれも登録には一定の実務経験を満たしたうえで各試験に合格しなければならず、すぐに取得できる資格ではありませんでした。
今後は、不動産特定共同事業に携わる候補の従業員に実務講習を受講させることで、小規模不動産特定共同事業の登録申請に必要な『業務管理者』の要件を満たすことができるようになります
主務大臣が指定する実務講習の内容
実務講習について、国土交通省が意見募集を行った「主務大臣が指定する小規模不動産特定共同事業に関する実務についての講習の基準(案)について(概要)」から、その内容を読み解いていきましょう
2.基準の概要
(1)指定の要件等
① 指定講習は講義、実技の指導及び修了試験により行うものであること。
② 指定講習は以下の事項を含む内容について講義を行うものであり、かつ、ホの事項 について実技の指導を行うものであること。
イ 不動産取引に係る事業の企画及び立案に関する事項
ロ 不動産取引に係る法務、税務及び会計に関する事項
ハ 不動産の賃貸借に関する事項
ニ 不動産の管理に関する事項
ホ 小規模不動産特定共同事業の仕組みその他不動産の証券化に関する事項
ヘ 不動産の価値に作用する諸要因についての調査又は分析に関する事項
ト 不動産投資市場及び不動産流通市場の動向に関する事項
チ 金融市場の動向に関する事項
③ 修了試験は、講義の終了後に行い、受講者が講義の内容を十分に理解しているかど うか的確に把握できるものであること。
④ 次のいずれかに該当する者又は次のいずれかに該当する者と同等以上の能力を有す ると主務大臣が認める者によって講義並びに修了試験の問題の作成及び採点が行われ るものであること。
イ 不動産取引に係る業務経験 7 年以上、かつ、不動産特定共同事業等の不動産証券 化の実務に関し適切に指導することができる能力を有する者
ロ 弁護士、公認会計士、税理士、大学の教授、准教授若しくは講師の職にある者、 又は不動産鑑定士であって不動産取引に係る知識を有する者
⑤ インターネットを利用する方法等により講義を受けることができるものであること その他の多数の者の円滑な講義の受講に資する措置が講じられていこと。
(2)指定講習の実施に係る義務等
① 指定講習に係る講義時間の合計が 10 時間以上であること。
② 指定講習を修了した者に 5 年以内の有効期間を記載した修了証明書を交付するこ と。
③ 指定講習の開始前に、指定講習実施規程を主務大臣に届け出ること。
④ 財務諸表等の備付け及び閲覧等
講義内容は、不動産と金融に関する内容が中心で、不動産特定共同事業の実務に役立ちそうです
修了試験もあるようなので、しっかり勉強しないといけませんね
指定講習は10時間以上とされていますが、インターネットの受講できるように、という配慮もあるので、WEB学習との組み合わせで、スクーリング回数を減らす工夫もなされるのかもしれません
不動産特定共同事業者へのステップアップにも有効
この度に実施が予定される実務講習は、小規模不動産特定共同事業に限定されているため、その修了者は、『許可制』である不動産特定共同事業の業務管理者となることはできません。
しかし、いったん小規模不動産特定共同事業の業務管理者となれば、その後の業務は「不動産特定共同事業の業務」の実務経験にカウントされるため、3年後には①不動産特定共同事業の実務経験3年以上を有する者として、不動産特定共同事業の業務管理者の要件を満たすことができます
不動産特定共同事業の許可を受けるもう一つの大きなハードルが、過去3年の財務諸表監査ですが、これも小規模不動産特定共同事業の登録と同時に監査を受け始めれば、ちょうど3年後には許可要件を満たすことになります
これまで『業務管理者』の候補者がいない、ということで申請を断念してきた読者の方々は、ぜひ実務講習を活用して、小規模不動産特定共同事業をスタートしましょう