こんにちは、カピバラ好き行政書士の石井くるみです
空き家利活用×不動産ファンドセミナー2020で今週は岡山県に行って参りました。
全6回のうち5回目まで終了
3/9に予定している最終回は東京なので、年明けから始まった怒涛の出張をすべて無事に終えることができました。
少し安堵しています。
旅館業のお仕事でもたびたび訪れている岡山県。
友人知人も参加して下さり、とても嬉しい楽しい出張でした
「民泊ファンド」「ホテルファンド」と不特法の関係
本日は全国賃貸住宅新聞の連載記事で紹介した「民泊ファンド」「ホテルファンド」に対する不特法の適用有無について解説します。
以前からもお話しているように、不動産取引(宅地又は建物の売買、交換又は賃貸借)から生じた収益又は利益を投資家に分配するファンドに対して不動産特定共同事業法(不特法)が適用されます。
では、住宅宿泊事業法に基づく届出をし、又は旅館業法に基づく許可を受けて営む宿泊事業を投資対象とする「民泊ファンド」「ホテルファンド」は、不特法の規制が及ぶ=組成には不特法のライセンスが必要になるのでしょうか
民泊ファンドは不特法の規制対象に
民泊施設(住宅)において住宅宿泊事業法に基づく届出をして民泊事業を営む「民泊ファンド」は、一般的に不特法の適用を受けます。
なぜなら、住宅宿泊事業法では、届出住宅で宿泊サービスを提供することができる日数の上限を年180日としており、残りの185日は一般的に住宅として賃貸(1ヶ月以上のマンスリー賃貸)で運用することとなるためです。
住宅の賃貸は不動産取引に当たるため、当該不動産取引から生ずる収益又は利益を投資家に分配するファンドには不特法の規制が適用されます。
ホテルファンドは物件の持ち方がポイント
ホテル施設において旅館業法に基づく許可を受けて宿泊事業を営む「ホテルファンド」では、年365日を通じて宿泊サービスを提供するため、施設の賃貸による収益又は利益は生じません。
ホテルファンドでは、宿泊サービス提供の対価として受領した収益(宿泊による事業収益)又は利益を投資家に分配しますが、宿泊サービスの提供は不動産取引(すなわち、不動産の売買、交換又は賃貸借)に該当しないため、他に不動産取引を行わない限りは、不特法の適用を受けません。
しかし、検討すべきは宿泊サービスの対価のみではありません
ホテルファンドでは、ホテル施設を所有するか、又は賃借するかで、不特法の適用有無が左右されます
物件所有型スキーム
ホテルファンドのうち、投資家から集めた資金で不動産(ホテル施設)を取得して宿泊事業を営む「物件所有型」のスキームは、不特法の適用を受けます。
なぜなら、運用期間の終了時に投資家に出資金を返還するにあたり、ホテル施設の売却(すなわち、不動産取引)を行い、その売却から生ずる収益又は利益を投資家に分配することとなるためです。
物件賃借型スキーム
賃借した施設で旅館業法に基づく許可を受けて宿泊事業を営む「物件賃借型」のスキームを考えてみましょう。
不動産を賃借したファンドは、投資家から集めた資金で施設のリノベーションや家具等の購入を行い、旅館業法に基づく許可を受けた後、宿泊事業から得られた収益又は利益をもって分配金の支払いを行うとともに、運用期間にわたって徐々に出資金の返還を行います。
このような物件賃借型のスキームは、不動産の売却を伴わないため、不特法の適用を受けません。
金商法の規制
不特法の適用を受けない物件賃借型のホテルファンドに対しては、不特法ではなく金融商品取引法(金商法)の規制が適用されます。
この場合、ファンドの出資(例:匿名組合契約に基づく出資)の募集又は私募を行うためには、第二種金融商品取引業者の登録を受けることが必要です。
しかし、この行為(募集又は私募)をライセンスを持っている他の第二種金融商品取引業者に委託するか、金商法に基づく適格機関投資家等特例業務の届出を行えば、ファンドの営業者は自ら金融商品取引業者のライセンスを受けることなくファンド事業を営むことができます。
不特法の適用を受けない形で組成された物件賃借型ファンドの具体例としては、石舞台古墳やキトラ古墳で知られる奈良県明日香村にある築150年の古民家を対象とした「明日香村古民家活用おもてなしファンド」が挙げられます。
このファンドでは、営業者である株式会社ジェイルーツが、クラウドファンディングによる出資の取得勧誘を、第二種金融商品業者であるミュージックセキュリティーズ株式会社に全部委託して古民家の改装資金を調達しました。
出所:セキュリテ(https://www.securite.jp/fund/detail/522)
ライセンスなしでファンドを募集することができるのは、時間・労力・費用を節約することができます
ホテルファンドの組成にあたっては、不特法の適用を受けない物件賃借型スキームの活用も検討しましょう