こんにちは、カピバラ好き行政書士の石井くるみです
3月に入り、梅の花が咲き、桜のつぼみも膨らんできましたね春の雰囲気を感じようと、カピバラ事務所にも小さなお雛様を飾りました
「FTKのすべて」を連載中の不動産フォーラム21の3月号では、不動産特定共同事業法に基づくファンドの組成に用いられるビークルである組合について解説しています。
出資の際に交わされる契約形態として利用される「組合」は、くファンドを組成にあたっての重要なテーマです。
概要をブログでもご紹介しますので、より興味のある方は、ぜひ月刊フォーラム21をお手に取ってください
組合の4形態
ファンド組成に用いられる代表的な組合の形態は大きく次の4つのタイプが挙げられます。
(1)匿名組合(商法第535条)
(2)任意組合(民法第667条に規定される組合)
(3)LPS(投資事業有限責任組合契約に関する法律第2条第2項)
(4)LLP(有限責任事業組合契約に関する法律第2条)
不特法に基づくファンドの組成にあたっては、通常は組合員(投資家)の責任が有限となる匿名組合をビークルとして選択し、相続税対策を目的とした商品としたい場合には無限責任となる任意組合が選択すると考えられています。
なお、現行の法制度では、LPSとLLPは不特法に基づくファンド組成のビークルには使えません
しかし、国土交通省が設置した「ESG投資を踏まえた不動産特定共同事業等検討会」では、今後の不動産特定共同事業におけるLPS及びLLPの活用可能性についての議論が行われており、注目に値します。
本ブログでは、まず現行のFTK事業で用いられる匿名組合(TK)と任意組合(NK)を説明します。
①「匿名組合」とは?
匿名組合契約は、出資の際に利用される契約の一種で、商法に規定されています。
商法第535条
匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。
「出資を受けた資金を元手に不動産投資をして、うまくいったら儲けを支払います。」というイメージです
実は、不動産特定共同事業法において、「匿名組合」という言葉は一切登場しません。
しかし、法第2条第3項第2号において定義される「不動産特定共同事業契約」は、商法の「匿名組合契約」と同じ解されているのです。
不動産特定共同事業法第2条
3 この法律において「不動産特定共同事業契約」とは、次に掲げる契約(予約を含む。)であって、契約(予約を含む。)の締結の態様、当事者の関係等を勘案して収益又は利益の分配を受ける者の保護が確保されていると認められる契約(予約を含む。)として政令で定めるものを除いたものをいう。
(略)
二 当事者の一方が相手方の行う不動産取引のため出資を行い、相手方がその出資された財産により不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる利益の分配を行うことを約する契約
見比べてみると、表現が同じであることが分かりますね
匿名組合契約は、匿名組合員と営業者との二者間の契約です。
1つのファンドに複数の匿名組合員が出資する場合であっても、あくまで匿名組合契約は各匿名組合と営業者の間に個々に存在します。
出所:日本橋くるみ行政書士事務所
匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しません(商法536条4項)。
そのため、匿名組合員(投資家)は営業者に対する出資額を限度とする有限責任のみを負うこととなります。
匿名組合契約では、匿名組合員の出資は営業者の財産に属し、営業者が業務の執行を行います。
投資家は、おカネは出すけれども、経営には口も出さないし、名前も出さない(匿名)という関わりになります
そのため、営業者(不動産特定共同事業者)は、匿名組合員(投資家)による経営参加の影響を受けることなく、安定的にファンド事業を営むことができます
税金の取扱いはどのようになるのでしょうか
まず、匿名組合契約により匿名組合員に分配する利益は、営業者の税務申告においては費用(損金)となります。
通常、営業者は匿名組合契約の対象となる営業から生じた利益の全額を匿名組合員に分配するため、二重課税が回避されます(ペイ・スルー)。
相続税・贈与税の計算にあたっての財産評価額は、課税時点において、仮に「匿名組合契約が終了した場合に匿名組合員が分配を受けることができる清算金の額」として評価します。
したがって、特段この評価においては、不動産を路線価や固定資産税評価額に基づき評価することで生ずる相続財産の圧縮効果は生じません(100万円の金銭出資をした場合は、100万円の金銭出資における課税時点の利益配当請求権と出資金返還請求権の評価)。
②「任意組合」とは?
任意組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生じます(民法第667条1項)。
各当事者が、出資を行い、その出資による共同の事業として、そのうちの一人又は数人の者にその業務の執行を委任して不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる収益の分配を行うことを約する任意組合契約は、不特法2条3項1号に規定する不動産特定共同事業契約に該当します。
民法第667条
組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
「みんなで出資から集めた資金で不動産投資をして、儲けもみんなで分け合おう。」というイメージです
「任意組合」についても、不動産特定共同事業法において用語は登場しません。
しかし、やはり法第2条第3項第1号において定義される「不動産特定共同事業契約」が、民法の「組合契約」と同じ表現がされているので、同じ性質のものと解されているのです。
不動産特定共同事業法第2条
3 この法律において「不動産特定共同事業契約」とは、次に掲げる契約(予約を含む。)であって、契約(予約を含む。)の締結の態様、当事者の関係等を勘案して収益又は利益の分配を受ける者の保護が確保されていると認められる契約(予約を含む。)として政令で定めるものを除いたものをいう。
一 各当事者が、出資を行い、その出資による共同の事業として、そのうちの一人又は数人の者にその業務の執行を委任して不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる収益の分配を行うことを約する契約
任意組合契約は、全ての組合員の間で契約関係が生じます。
共同で行う事業であるため、組合財産は、総組合員(投資家)の共有に属し、任意組合員は事業から生じた第三者に対する債務について、無限責任を負います。
組合の業務の執行は、原則は組合員の過半数で決しますが、契約上で業務の執行を委任した者を数人定めたときは、そんの過半数で決します。
事業を行うには、やはり取りまとめを行うリーダーの存在が不可欠です。
不特法の任意組合型ファンドでは、不動産特定共同事業者を単独の業務執行組合員として定めることが通常です
税金の取扱いについて、任意組合において営まれる事業から生ずる利益又は損失は、各組合員に直接帰属します(パス・スルー)。
相続財産評価については、財産評価基本通達には任意組合に関する評価方法は明示されていません。
実務上は、各任意組合員がその持分割合に応じて組合財産(ここでは不動産)を直接所有するものとして財産評価が行われます。
したがって、各任意組合員は、不動産を直接所有した場合と同様に一定の評価減を適用できるものと考えられています。
この論点については、以前の「「任意組合型ファンド」を超える相続対策商品『不動産小口信託受益権』とは!?」でもお話しした通りです
今後のFTK事業への活用が期待されるLPSとLLPについては、次回のブログで解説したいと思います