こんにちは、カピバラ好き行政書士の石井くるみです
最近、不動産特定共同事業をはじめとする金融分野の許認可実務において、違法なコンサルティングによる悪質な被害が度々生じています
あまりにも目に余るので、このブログでも注意喚起を呼びかけます
とあるFTK「違法」コンサルティング被害の事例
いったい、どのような被害が生じたでしょうのか?
カピバラ好き行政書士が遭遇した、とある事例をご紹介します。
・不動産特定共同事業への参入を検討したA社は、あるコンサルティング会社(C社)と、許可申請業務を含むコンサルティング契約を結んだ。
・コンサルティング報酬は、月額○○万円で設定された。
・A社は、不特事業の許可を受けられることを見込んで、エンジニアを直雇用し、クラウドファンディングシステムの自社開発も進めた。
・2年近く経過したが許可が下りなかったため、不安に思ったA社代表は、カピバラ好き行政書士にセカンドオピニオンを求めた。
・カピバラ好き行政書士が申請内容を確認したところ、行政に対する初回相談以降、何ら進展がない状態だった
(A社代表は、C社担当者から「手続きは最終段階で間もなく完了する」との説明を受けていた)
・さらに、A社はそもそも、許可に必要な基準を満たしていないため、申請自体が不可能であることが判明した。
・クラウドファンディングのシステム開発も含め、数千万円単位の損失が生じた
この事例は脚色ではなく本当の話・・・・むしろ簡潔にまとめた、氷山の一角です
そもそも、コンサルティング会社が、許可申請業務の作成(支援を含む)を受けることは、法律で禁止されています。
法令違反が犯される上に、結果としてクライアントに損失が生じる場面をいくつも見ているカピバラ行政書士は憤りを隠せません
とても、やるせない気持ちです
行政書士法の規制とは?
行政書士・行政書士法人・弁護士・弁護士法人以外の者は、許可申請の代理はもちろん、書類作成を行うことも法律で禁止されています。
すなわち、行政書士又は弁護士以外の個人(いわゆる無資格コンサルタント)や、行政書士法人又は弁護士法人以外の法人が、許可申請関係の手続を行うことは、法に抵触する行為です。
会社は「行政書士法人又は弁護士法人以外の法人」ですので、コンサルティング会社が「許可申請代理(代行)」や「書類作成」を行うことは、違法行為となります。
この根拠となる行政書士法の規定を見てみましょう
(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
(業務の制限)
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
なお、弁護士・弁護士法人は、行政書士法19条但書「他の法律に別段の定めがある場合」として、行政書士業務を行うことが可能です。
なぜ行政書士でない者が許認可書類を作るのはダメなの?
クライアントのみなさまを保護するためです。
許認可取得を目指す事業会社にとって、行政書士資格の有無は重要な問題ではないかもしれません。
(極論、許可が取れるのであればよい・・・という考えているきらいがあるかもしれません)
しかし、必要な資格がない者は、複雑な許認可手続を行うに足る、十分な知識や経験のない可能性があります。
そのような者が、クライアントに損害を与えることがないよう、厳しいライセンス規制が設けられているのです。
(宅建業の免許を持たない者が宅地建物取引業を営むことが禁じられている、医師免許を持たない者が医療行為を行うことが禁じらているのと同様です)
特に、プロジェクト初期段階での、許認可を受けられるか否かの見極め(欠格事由や登録拒否事由への該当性判断)はとても重要です。
カピバラ好き行政書士が行う相談業務では、不許可になる得るリスクはもちろん指摘したうえで、「何のためのFTKを行うのか」、「FTKは本当に貴社の役に立つのか」という事業判断にまで踏み込んだ問いかけを行っています。
クライアントが改めて考えた結果、FTKは最善の選択ではないという結論に至り、仕事の受任につながらないケースも多々あります。
しかし、クライアントが許可を受けられないことを知りながら、又はFTK事業を行うメリットが少ないことを知りながら、それを伝えずに仕事を受任することは職業倫理に反する行為です。
民間と行政の架け橋である行政書士は、職業倫理を重視し、プロとしての意識を持ちながら業務にあたっています。
その結果、クライアントのビジネスに貢献する、迅速で正確な申請業務を行い、価値が高いサービスを提供できるようになるのです
そもそも、法令違反を知りながら(又は知らずして)許認可手続きを行うコンサルタントが、法令に則り、高度に専門的なリーガルサービスが提供できるとは考えにくいものです。
その結果、余計な時間、労力、費用を負担することになる、最悪の場合は許可が下りない可能性もあります
行政書士を雇用するコンサル会社は、業として、許認可書類を作成できる?
できません。なぜなら、雇用する行政書士有資格者が書類作成を行った場合でも、行為を行う主体は「会社」となるためです。
「会社」は行政書士・行政書士法人・弁護士・弁護士法人以外の者であり、前述のとおり許可申請書類を作成することはできません。
「うちの会社には行政書士の有資格者が在籍しています」との説明を受けて、誤解しているケースも多くあります。
行政書士を雇用して行政書士サービスを提供できるのは、行政書士法人と行政書士個人事務所のみです。
「違法」コンサルタントに見られる共通点
さまざまな場面を見る中で、「違法」「悪質」なコンサルタントには共通点があると感じています。
下記の項目をチェックして、悪質なコンサルティング被害に遭わないように注意しましょう
(1)コンサルティング会社が、「許可申請」の要素を含むサービスを謳っていないか?
(2)個人コンサルタントの場合、弁護士や行政書士の資格を持っているか?
行政へ提出する許可申請書類の作成(支援を含む)は弁護士又は行政書士の有資格者でなければ行うことができません。
違法行為を平然と提案してくる会社やコンサルタントには要注意です。
(3)許認可申請の報酬を月額で請求している場合は要注意
許可申請業務では、申請書類の作成など一定の作業が伴いますが、申請までに要する期間は、行政庁の状況次第で待たされることも多く、事業者側ではコントロールできない要素があります。
したがって、一般的には、作業量に応じて報酬をお支払いいただくことが妥当であるとカピバラ好き行政書士は考えています。
また、月額報酬制にすると、コンサルタントに申請までに要する期間を引き延ばすインセンティブ(利益相反)が生じます。
許認可申請書の作成という成果物がある業務について、月額報酬を提案してくる会社やコンサルタントには要注意です。
(4)説明責任を軽視していないか
「私に任せれば、何もしなくても、簡単に、すぐ、ライセンスが取得できる」と安易に業務を請け負う。
過去の経歴や、コンサルタント自身の人脈をひけらかすばかりで、法律知識や具体的な実務についての説明がない。
申請状況の報告、時間がかかっている場合はその理由の説明がきちんとなされない。(状況を尋ねると、いつも「もうすぐ」との回答が来る)
(5)事業のメリットのみを強調していないか?
コンサルティングの対象なる事業のメリットのみを強調し、デメリットや事業リスクの説明を行わないことは職業倫理に反する行為です。
画一的な一般論を告げ、クライアントの事業内容を踏まえた具体的な落とし込みの提案ができないことも同様と考えられます。
FTKのメリットばかりを強調し、デメリットの指摘なしに事業参入を勧める会社やコンサルタントには要注意です。
(6)その他
「勉強になるから」と他社のファンド商品の購入をやたらに勧めてくる。
コンサルタントが他社商品の販売に応じて、バックマージンを受け取る仕組みになっていたことが発覚した事例が存在します。
2号事業の許可を受けていない者がFTK商品を勧誘する行為は、不特法で禁じられた違法行為であり、言語道断です。
不動産ファンド事業をはじめとする金融分野は、高度に複雑な内容であるため、十分な知識や経験を持つ専門家の関与が重要です。
依頼者の側も、コンサルタントに課せられる最低限の法令要求を理解して、違法なコンサルティングを受けないよう自己防衛しましょう。