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本日は、行政手続きで99%廃止されるという「印鑑」のお話
こんにちは、カピバラ好き行政書士の石井くるみです
民間と行政の架け橋たる行政書士業務において、「印鑑」はとても重要な存在です。
もちろん、読者のみなさまにとっても日常生活やビジネスの様々な場面で、印鑑を使用されることと思います。
日本は長らく「ハンコ社会」とも言われてきましたが、その弊害が一気に問題化したのが今日この頃です。
リモートワークや在宅勤務が導入されて出勤が減り、オンライン会議やメールで仕事は進められるものの、
「承認、決裁印がないので、物事が進められない・・・・・」
問題にぶつかった方も多いのではないでしょうか
さて、11月13日の定例会見で河野太郎行政・規制改革担当相から、
「行政手続き約1万5000種類のうち、99%以上の手続きで押印を廃止する」
と、衝撃的な発表がなされました
「認印全廃」を受けて、私たちの不動産の業務においては、どのような影響があるのでしょうか
不動産投資と収益物件の情報サイトを運営する健美家(株)様からインタビューを受けましたので、本日、ブログでもご紹介したいと思います
健美家ニュース「行政手続きで、認印全廃に向けた動き。 不動産業界ではどんな影響がある?」
登記などの実印は存続でも、住民票の転入・転出届けなどでの認印は廃止
まずは、これまで印鑑が担ってきた役割について考えてみましょう
印鑑には、本人が市区町村に登録した『実印』と、登録のされていない『認印』の2種類があります。
今回の印鑑不要論の対象となっているのは、『認印』です。
そもそも押印の目的は、民事裁判において、契約書等の私文書が、押印をした本人によって作成されたことを示すことにあります。
たとえば、ある顧客と不動産を売買する契約書を作成したのに、後になって
「私はこの契約書を作成した記憶がなく、偽造されたものだ」
と言われて裁判になるケースを想定すると分かりやすでしょう。
民事訴訟法には「私文書は、本人[中略]の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」という規定があります。
すなわち、不動産の売買契約書の中に顧客の署名又は押印があれば、裁判上、その私文書は、本人(顧客)が作成したものであることを主張できるのです
しかし、裁判において顧客から『他人がその印鑑を利用した可能性がある』などの反証がなされた場合には、本人が作成したという推定は破られてしまうリスクがあります。
そこで利用されるのが「実印」とその「印鑑証明書」です。
契約書に顧客の実印を押してもらい、その印影に係る印鑑証明書を得ていれば、その印鑑証明書をもって、印影と作成名義人の印章の一致を証明することができます
一方で、「認印」には印鑑証明書が存在しないため、もしも、「他人が自分の認印を不正利用した可能性がある」といっても、それを証明する手段がありません
場合によっては署名(手書きのサイン)の方が、認印に比べ、本人の筆跡との一致を証明しやすいケースもありえるでしょう。
したがって、今後も、不動産売買契約書のような重要な契約書には引き続き『実印』が使われていくと予想されます。
しかし、それ以外の『認印』で済ませている重要性の低い書類については押印をなくして署名のみとして、代わりに本人が契約書を交わしたことを証明できる運転免許証やマイナンバーカードを確認しようという考え方、いわば『書類上の認印不要論』が出てくると思います。
認印廃止から、契約の電子化、書類のペーパレス化が進む?
この「認印不要説」は、
「そもそも、紙の書類自体が要らないのではないか」
という「書類不要論」に変化すると予測されます
紙の契約書等は、作成するたびに、印刷や郵送の事務作業が発生し、かつ契約書等の原本の保管や事後的な検索のコストがかかります。
紙の契約書等を廃止し、オンライン上で迅速に契約を完結させる「電子契約」に移行することに大きなメリットがあると考えています。
地面師やなりすまし、詐欺被害が増えるなどの問題は?
「認印廃止によって、地面師やなりすまし、詐欺が増えるなどの悪影響はないのでしょうか」
というご質問を受けました。
私自身は、重要な契約書には引き続き『実印』が使われていくと予想されるため、認印の廃止=地面師被害やなりすまし/詐欺被害の増加につながるとは考えにくいと思っています。
むしろ、3Dプリンター等の技術の進歩で、実印の印章が模倣されてしまうことにより、地面師被害等が増加することの方が懸念されます
そこで注目するのが、前述の電子契約です。
電子契約では、「電子署名」という方法を用いて、偽造・改ざん不可能な電子的な微証を電磁的記録に付与することができます。
コロナによるテレワーク文化の浸透や、環境への配慮を謳うESG/SDGsの広がりのも、事務コストや紙資源の消費を抑える電子契約の導入を後押しすると思います。
そして、電子契約の導入は、不動産会社の業務全体の電子化・オンライン化のきっかけになり得ると考えられます
電子署名や電子契約に、まだ馴染みが薄い人もいらっしゃるかもしれませんが、カピバラ事務所では、電子署名や電子契約で業務を進める機会も多いです。
慣れればとても便利で簡単
時間や手間を省略することができ、保管も容易で安全性が高い電子契約が広がっていくことに期待しています
コロナの影響で、不動産業界にもオンライン化が急速に進む今、認印廃止や電子契約、電子署名などの広がりによって、不動産業務においても、書類の取り扱いフローに大きな変化がありそうです。
不動産業界では、これまで紙やFAXを多用してきたが、その業務フローが大きく変わるときなのかもしれません