2026年8月18日、くるみ事務所では「不特法コンプライアンス2026 最新の犯収法・反社対策アップデート」と題し、不動産特定共同事業者をはじめとするファンド事業者向けのコンプライアンス研修を実施しました。
今回の研修で大きなテーマとなったのが、2027年4月1日に全面施行される犯罪収益移転防止法施行規則の改正です。
本人確認は「画像を見る」から「真正性を電子的に確認する」時代へ
現在のオンライン本人確認では、本人確認書類の撮影画像と本人の容貌画像を組み合わせる方法などが広く利用されています。
しかし、2027年4月以降は、本人確認書類の画像や写しを利用する方式が原則として廃止され、ICチップや電子証明書を利用して本人確認書類の真正性を確認する方式へ大きく移行します。
主な本人確認方法は、次のようになります。
・マイナンバーカードや運転免許証等のICチップ情報を読み取る方法
・マイナンバーカードの電子証明書を利用する公的個人認証(JPKI)
・スマートフォンに搭載されたマイナンバーカード機能を利用する方法
デジタル難民への対応
一方、スマートフォンやICカードの利用が難しい顧客については、住民票の写しや印鑑登録証明書など、所定の本人確認書類の原本の送付と転送不要郵便を組み合わせる方法も残されます。
不動産クラウドファンディングなど、オンラインで多数の投資家を受け入れている事業者にとっては、システムだけでなく、顧客対応や社内規程まで含めた見直しが必要になります。
犯収法対応は「本人確認をすれば終わり」ではない
研修では、本人確認以外にも、
・確認記録・取引記録の作成と7年間の保存
・法人顧客における実質的支配者の確認
・ハイリスク取引への追加確認
・疑わしい取引の識別と行政庁への届出
・反社会的勢力の事前チェックと継続的なモニタリング
など、ファンド事業者に求められる一連の対応を、実際の業務フローに沿って確認しました。
特に注意したいのが、契約締結時だけの対応では不十分という点です。
ファンド契約の解除、持分の承継・譲渡など、通常とは異なる取引についても取引記録の作成が必要となります。
また、反社会的勢力への対応についても、新規顧客との取引開始前にチェックするだけではなく、既存契約について継続的に検証する体制が求められます。

今後、重要になる「リスクベース・アプローチ」
マネロン対策では、すべての顧客・取引に同じ対応をするのではなく、自社の商品や顧客、取引形態などからリスクを特定・評価し、そのリスクに応じた対策を講じるリスクベース・アプローチが重要になっています。
例えば、
・非対面取引における、なりすましリスク
・分配金・償還金の振込先口座変更に伴う借名口座リスク
・海外居住者やFATF監視対象国に関係する取引
・反社会的勢力との取引
など、自社の業務にどのようなリスクが存在するかを洗い出し、その低減措置と残存リスクを文書化しておくことが有効です。
研修では、こうした分析を「特定事業者作成書面」等として文書化する際の考え方についても解説しました。
2027年4月までに確認しておきたいこと
改正まで残された期間を考えると、不動産ファンド事業者においては、少なくとも次の対応を進めておく必要があります。
・現在利用しているeKYC・本人確認方法の棚卸し
・eKYCベンダーの2027年改正への対応予定の確認
・ICチップを利用できない顧客への代替手続の検討
・犯収法規程・本人確認マニュアル等の改訂
・疑わしい取引・ハイリスク取引を識別する社内体制の確認
・自社のマネロンリスク評価と低減措置の文書化
特にeKYCを利用している事業者では、「現在のサービスがそのまま2027年4月以降も利用できる」とは限りません。
制度改正の直前になってシステムや業務フローを変更することにならないよう、2026年中に現在の本人確認方法と社内体制を一度棚卸ししておくことをおすすめします。
日本橋くるみ行政書士事務所では、不動産特定共同事業者・金融商品取引業者等を対象に、犯収法・反社会的勢力対応を含むコンプライアンス体制の整備、社内規程・マニュアルの見直し、社内研修等を支援しています。
2027年4月の改正に向けた対応についてお困りの点がございましたら、お気軽にご相談ください♪
