こんにちは、カピバラ好き行政書士の石井くるみです
秋も深まり、そろそろ衣替えの季節ですね。休日にはぜひ紅葉狩りに出かけたいです
先週の嬉しいお知らせ・・・岐阜県で申請していた新規ホテルFAV Hotel TAKAYAMAの旅館業許可と東京都で申請していた不動産特定共同事業(第一号・第二号・電子取引業務)の許可が下りました。
どちらもご相談を受けてから、許可まで1年半ほどかかりましたので、お客様と一緒に喜んでいます
許可が下りて、事業がスタートするこれからがむしろ忙しくなります。
目下、ホテルの正式OPEVと第1号ファンドの事業計画やリリース準備を進めているので、またご報告したいと思います
倒産隔離・オフバランス可能な特例事業(SPC)型の不動産特定共同事業をクラウドファンディングで
最近、「特例事業(SPC)型の不特法ファンドを組成して、インターネット上で出資を集めたい」という相談が増えています。
特例事業型の不動産特定共同事業では、特例事業者(SPC)に不動産を保有させて、その特例事業者に対する出資を募集します。
特例事業型不動産ファンドの仕組みは先日のブログ「トーセイ不特法ファンドを解説! 特例事業(SPC型)の投資家メリット『倒産隔離』」で解説しています。
特例事業者(SPC)は、専ら不動産を保有するだけの存在で、特例事業のための不動産取引に係る業務及び契約締結の勧誘業務について、それぞれの業務の受託に関して許可を受けた不動産特定共同事業者に委託しなければならないとされており、不動産取引業務を受託する許可を受けた事業者を一般的に第三号事業者、契約締結の代理・媒介業務を受託する許可を受けた事業者を第四号事業者といいます。
FTK特例事業で扱われる契約上の権利は金商法上のみなし有価証券=第二種金商業者の登録が前提
特例事業者と締結した不動産特定共同事業契約に基づく権利は、金商法上の二項有価証券とされ(金商法2条2項5号ハ参照)、その取引について金商法の規制が適用されます。
すなわち、FTK法の第四号事業者は、金商法上の二項有価証券を扱うため、前提として、第二種金融商品取引業者としての登録を受けている必要があります。
そして、インターネット上で不動産ファンドへの出資を募集すること(いわゆるクラウドファンディング)について、金融商品取引法と不動産特定共同事業法では、概念の範囲とルールが微妙に異なるので、そのちがいを理解することが必要です。
クラウドファンディング・・・金商法と不特法それぞれの概念と規制のちがい
不動産特定共同事業法では、ホームページやe-mailで不動産特定共同事業契約の締結の申込みをさせる業務を「電子取引業務」として規制しています。
電子取引業務を行うためには電子取引業務の認可を受けることが必要とされていますが、事業者のホームページ等に個別のファンド情報を掲載すること自体は特段規制されておらず、電子取引業務の認可を受けていなくても可能です。
他方、金融商品取引法では、事業者のホームページ上において、 個別の有価証券について、その商品概要や手数料、予想リターン、申込期間などを掲載することを「電子募集取扱業務」(金商法第 29 条の2第 1 項第 6 号)と位置づけ、電子募集取扱業務を行うためには、その旨を含めて登録の申請を行うことが必要となります。
つまり、金商法ではホームページ等に有価証券の情報を掲載すること自体が規制されているので、特段その規制がない不特法の方が金商法よりもデジタル広告を行いやすいと考えられます
さらに、金商法では、電子募集取扱業務のうち、金商業者のホームページ等を通じて(金融商品取引業等に関する内閣府令第70 条の2第3項第1号及び第2号に掲げる方法)顧客に有価証券の取得の申込みをさせる業務を「電子申込型電子募集取扱業務」としています。
電子申込型電子募集取扱業務を行う事業者は、当局に対して、その内容で登録の申請を行う必要があります(金商法31条第 4 項及び金商業等府令第22条の規定により)。
「電子募集取扱業務」や「電子申込型電子募集取扱業務」は、金商法上の規定であり、不特法における「電子取引業務」とは別に存在する概念です。
もし、不特法の特例事業型の不動産ファンドにおいて、事業者のホームページ等でFTK契約締結の勧誘や募集を上で行うためは、ざっくりと次の内容でのライセンスが必要となります。
・第二種金融商品取引業(金商法)
・電子申込型電子募集取扱業務(金商法)
・不動産特定共同事業第四号許可(不特法)
・電子取引業務(不特法)
第二種金融商品取引業(電子申込型電子募集取扱業務を行う)の登録を行うためには?
不特法の第四号事業(FTK契約締結の代理・媒介業務)をインターネット上で行うには、第四号事業許可の前提として、第二種金融商品取引業(電子申込型電子募集取扱業務を行う)の登録を行うことが必要です。
第二種金融商品取引業(電子申込型電子募集取扱業務を行う)の登録は、管轄の財務(支)局等が申請窓口となります。
内容として共通する部分はあるものの、申請窓口も申請様式もまったく異なるため、準備には相応の時間とエネルギーが必要です。
登録までの流れは次の通りです。
①概要書の提出
②事前相談(面談)
③申請書の提出
④登録完了
もっともエネルギーが必要となるのは、「①概要書の作成」です。
「概要書」は、その名の通り、事業者が行う第二種金商業の概要をまとめる書類で、様式は監督当局から指定されています。
概要書には、会社の組織体制や、各部門の担当者の業務知識や経験、各業務フロー(営業態勢、帳簿の作成、ディスクロージャー、顧客管理、社内研修体制、苦情対応、営業員管理、広告審査、取引時確認体制、リスク管理、反社態勢、内部監査、電子募集取扱業務)の内容を、事細かに、具体的に書き込む必要があり、30~50ページほどの分量(+社内規程類を添付)になることもしばしばあります。
第二種金融業の登録においては、「登録申請書」や「業務方法書」はあっさりと簡潔にまとめられた書類で、「概要書」の作成こそが申請業務のメインと言える存在ですが、概要書がある程度きちんとできていないと、②の事前相談(面談)すら進むことができません
社内体制や具体的な業務フローだけではなく、経営者や常務に従事する役員、コンプライアンス担当者、内部監査担当者についても、第二種金商業における知識や経験が求められることから、人材確保も非常に大きなハードルと言えます。
どの程度の知識や経験があれば要件を充足できるかというのも、行おうとする第二種金商業務の内容や想定顧客により異るため、一概に明記することができません。不特法における業務管理者の方が資格要件が明確でわかりやすいと言えるでしょう
いっそう許認可のハードルが高い特例事業(SPC)型クラウドファンディング。
しかし、今後のFTKファンドにおいて、事業者と投資家双方にメリットが大きいこのスキームが広がっていくとカピバラ行政書士は考えています
申請から許可取得までは年単位の時間が必要になるため、将来の事業展開を見据えて準備を進めましょう