投資家から出資を受けて、不動産の取引を行い、その収益を投資家に分配する「不動産特定共同事業」。昨年6月の改正で「小規模不動産特定共同事業」が創設され、非常に注目が集まっている不動産証券化の1つの手法です。
「新しく許可を取得したい」というお問い合わせも多くありますが、「以前に許可を取得したものの、特に何の事業もしないまま活用してきませんでした。改めて、心機一転、事業モデルを組みたいのですが、どうしたらよいですか」という既得事業者様からのご相談をいただくことが増えてきました。
以前不動産特定共同事業の許可を得たものの、当時の担当者は社内におらず、事業実績報告や手続がどうなっているかわからないという場合どのような手続きが必要になるのでしょうか。本日は、不動産特定共同事業法に基づく登録内容の「変更の認可」と「変更の届出」について解説していきます
不動産特定共同事業法には、一定事項の変更が生じる場合は、変更の届出又は変更の認可が必要とされています。
【変更の認可】(法第9条)
特に重要な種別や約款の変更は「認可制」なので、変更前に主務大臣or都道府県知事に申請する必要があります。新しい事業モデルを組み立てる際には必須になると考えられる約款変更、入念な準備が必要となります。
・不動産特定共同事業の種別を変更するとき
・不動産特定共同事業約款の作成、変更、追加を行うとき
・新たに電子取引業務を行おうとするとき
・事務所を追加設置するとき
(不動産特定共同事業法)
第九条 不動産特定共同事業者は、次の各号のいずれかに該当するときは、主務省令で定めるところにより、第三条第一項の許可を受けた主務大臣又は都道府県知事の認可を受けなければならない。
一 不動産特定共同事業の種別を変更しようとするとき(主務大臣又は都道府県知事の第三条第一項の許可を受けた者が同項の規定により新たに都道府県知事又は主務大臣の同項の許可を受けなければならないときを除く。)。
二 新たに不動産特定共同事業契約約款の作成をし、又は不動産特定共同事業契約約款の追加若しくは変更(不動産特定共同事業契約約款に記載された事項の追加又は変更で主務省令で定める軽微なものを除く。第六十七条第四項及び第八十条第二号において同じ。)をしようとするとき。
三 新たに電子取引業務を行おうとするとき。
2 不動産特定共同事業者が、事務所を追加して設置しようとするとき(第八条第一項各号に掲げるときを除く。)も、前項と同様とする。
変更の認可に必要な提出書類等については、不動産特定共同事業法施行規則第15条に規定があり、次のようなものが挙げられます。
・組織に関する事項を記した書類
・新たな(申請しようとする)不動産特定共同事業契約約款
・電子取引業務取引に関する事項を記した書類
(不動産特定共同事業法施行規則)
第十五条 法第九条の規定による認可の申請は、別記様式第五号による認可申請書を提出して行うものとする。
2 前項の認可申請書には、次に掲げる書類を添付するものとする。
一 不動産特定共同事業の種別を変更しようとする場合にあっては、不動産特定共同事業の業務を執行するための組織に関する事項を記載した書類
二 新たに不動産特定共同事業契約約款の作成をし、又は不動産特定共同事業契約約款の追加若しくは変更をしようとする場合にあっては、新たに作成若しくは追加しようとする不動産特定共同事業契約約款又は変更後の不動産特定共同事業契約約款
三 新たに電子取引業務を行おうとする場合にあっては、電子取引業務を遂行するための体制に関する事項を記載した書類
四 事務所を追加して設置しようとする場合にあっては、当該事務所に係る第十三条第二項各号に掲げる書類
【変更の届出】(法第10条)
また、下記の事項などに変更があった場合は、30日以内に主務大臣or都道府県知事等に届出が必要です。前任者との引継ぎができておらず、届出を失念しているということはありませんか届出をしていないor虚偽の届出を行った事業者は、30万円以下の罰金に処される可能性があります(法第84条)
・商号、名称、住所
・役員氏名
・事務所の名称や所在地、業務管理者名
・資本金
・電子取引業務を行うか否か
・兼業の場合の他の事業の種類
・不動産特定共同事業に係る業務の方法
・役員の兼業状況
・電子取引業務に関する体制
(変更の届出)
第十条 不動産特定共同事業者は、第五条第一項各号(第五号から第九号までを除く。)に掲げる事項について変更(同項第三号に掲げる事務所の所在地の変更については、第八条第一項各号及び前条第二項の規定に該当するものを除く。)があったときは、三十日以内に、主務省令で定めるところにより、その旨を第三条第一項の許可を受けた主務大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
「不動産特定共同事業に係る業務の方法」とは、いわゆる「業務方法書」と呼ばれるもので、事業者が行おうとする不動産特定共同事業の方針、フローをまとめたサマリーで、申請において最も重要な書類の1つです。しかし、事業者ごとに行おうとしている事業モデルは当然異なるため、これといった雛形があるわけではありません。
重要な書類であるにも関わらず、書類作成上、最も戸惑うものとも言えますまた、以前は不動産特定共同事業の申請上、特に必要とされていなかったため、「業務方法書がありません・・・・・」という相談者様も。そのような場合は、お客様からじっくり会社の社内体制、事業の状況、今後検討している不動産特定共同事業の内容などをヒアリングしつつ作成していきます
不動産特定共同事業に限らず、ファンド事業については事業者側の法令の理解がとても重要になります。当局は投資家保護の観点から、事業者側がきちんとコンプライアンスも理解した上で事業を行うことができるかを厳しく審査します。(行政書士がせっせと書類作成したは良いが、肝心の事業を行う事業者が内容を理解していなかったら、困る事態になります)私はお客様の事業の立ち上げのサポート役としてお手伝いできれば嬉しく思います