
さて、前回は、不動産特定共同事業の匿名組合の契約上の権利を、匿名組合員(事業参加者)から営業者(不動産特定共同事業者)に譲渡することができることを解説しました。
本日は、その結果として、「自らが営業者である匿名組合の権利を取得した場合の権利義務関係がどうなるのか}について解説します。
【質問】
不動産特定共同事業の匿名組合契約の権利を事業者(営業者)が買取った場合、その権利はどうなるの?
【回答】
営業者が匿名組合契約上の権利(債権)を取得した場合、当該債権は営業者の債務との混同により消滅します。
【解説】
営業者が匿名組合員の契約上の権利を取得した場合の取扱いについては、民法第520条に規定に基づき、「混同により権利・義務が消滅する」が通説となります。
民法第520条 債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。
なお、法律上は権利が消滅しますが、ファンドの分別管理の観点からは、営業者が取得した匿名組合員の契約上の権利は、営業者が保有する優先出資として概念上整理して帳簿の作成やファンドの計算を行う必要があります。
※権利は消滅するため、「事業者が買取りを行った権利を再販する」という概念は、基本的には存在しません。もし再販を行うとすると、法律上は新たな権利を発行して契約することとなりますが、モデル約款においては、不動産特定共同事業契約の追加募集は想定されていません。
以上、参考になりましたでしょうか?
「債権債務の混同による消滅」は、相続やお金の貸借などいろいろな場面で起こりうる、法律論点ですが、不特事業に当てはめると、とても興味深いですね