「対象不動産変更型」の不動産特定共同事業(FTK)ファンド約款作成のポイント①

こんにちは、カピバラ好き行政書士の石井くるみです。8月も下旬ですが、厳しい暑さが続いていますね太陽
最近、「対象不動産変更型」の不動産ファンド組成についての相談が増えています。
対象不動産変更型の不動産ファンドとは、不動産を追加取得や売却を繰り返し、また、出資の追加募集を行いつつ、不動産を入れ替えながら運用していくファンドです。
投資家との出資契約も契約期間の定めなく、無期限で運用することも想定されます。
さしずめ、「プチ・RIET(リート)」のイメージでしょうかニコニコ

対象不動産変更型の不動産ファンドの約款作成について

不動産特定共同事業法では、対象不動産を追加して取得し、又は自己の財産若しくは他の不動産特定共同事業契約に係る財産を対象不動産に追加することや対象不動産の変更を行うことを予定する不動産特定共同事業契約を「対象不動産変更型契約」と定義しています。
不動産は、経済動向などにより価格が変動するので、売買のタイミングを見極めが重要です目
「今は売却すべき時ではないのに、契約期間が終了するので安価で換価する」というのは、投資家にとってもアンハッピーガーン
1つのファンドにおいて複数の不動産を運用しつつ、各不動産の時宜にかなうタイミングで、柔軟性を持って不動産を売買する「対象不動産変更型」ファンドは、投資家の利益にも資することでしょうウインクルンルン
そこで今日は、「対象不動産変更型契約約款」(投資家との契約書のひな型)作成のポイントについて解説しますセキセイインコ黄オカメインコセキセイインコ青

対象不動産変更型契約の特徴 ・ 一般的なファンドとココがちがう!

対象不動産の変更を予定しない通常(一般的な)不特法ファンドは、投資対象となる不動産が特定されています。
投資家は、特定されている不動産の情報を確認し、投資するかどうかの判断を行うことができます。
「利便性が高い都心の新築マンション。居住ニーズも高そうだから投資したい!
「にぎわう繁華街に建つ飲食店が複数入った1棟ビル。実物も確認した上で投資しようOK
ところが、対象不動産変更型契約は、当初の不動産が売却されて、別の不動産を取得することを予定するファンドです。つまり、自分(投資家)の投資志向に合わない不動産をファンドが取得する可能性があります。
『自己責任の原則』とは、投資家が自らリスク判断を行ったうえで責任を引き受けることであり、いったん投資家に提示した投資方針が不動産特定共同事業者の一存で変わってしまうことは不適切です。
対象不動産変更型のファンドには、通常のファンドとは異なり、次のような特徴と組成にあたり検討課題があります。

特徴① 対象不動産の売却&追加取得が行われる

「都心マンションだと思って投資したのに、いつの間にか売却されて、地方のボロボロの築古アパートになってるガーン
「古民家を再生する街づくりファンドというから応援の気持ちで投資したのに、取得していくのは自社が作った投資アパートばかり炎
という例のように、投資家の意向に沿った不動産の売却と追加取得が行われるための手当てが必要になります。
そのため、法令は・・・
 右矢印売買価格の適正性(特に利益相反取引の場合)を確保すること
 右矢印追加取得を行う不動産の範囲(追加取得方針や手続き)を予め定めておくこと
 右矢印追加取得を行う不動産の範囲を変更する場合の手続きと、反対者に対する対応を検討すること
等を事業者に義務付けていますヒヨコ

特徴② 出資の追加募集が予定される

「自分が投資した時は1口1万円で募集していたのに、追加の2次募集は1口8千円で募集しているガーン
自分は応募し忘れたので、追加募集の結果、1口の価値が薄まってしまった!
株式の公募増資をイメージしていただけるとわかりやすいかと思いますニコニコタラー
追加募集を行うことで、権利の変動が生じることは不可避ですが、こういったトラブルを避けるために・・・・
 右矢印追加募集により既存出資者の契約上の権利の価格の変動する可能性があることを前以て説明すること
 右矢印追加募集の出資の優先権を既存出資者に付与するなど、既存出資者の権利の保護を検討すること
等が要請されますカエル

特徴③不動産の売却から次の不動産の取得までの期間などに金銭の余剰が発生する

「不動産を売却した後、いつまで経ってもファンドが新たな物件を取得しない。
 出資は返還されず、銀行に預けたままで増えないから、分配金も払われないし、お金が遊んでいるガーン
対処不動産変更型契約では、対象不動産の取得と売却が常時行われます。
投資家の利益のためには、不動産が割安な時期に取得(仕入れ)し、割高な時期に売却することが重要ですが、営業者が市況を伺いつつ売買を行うので、売却から次の不動産購入まで時間が空くこともあるでしょう。
しかし、あまりにも長期間にわたって、ファンド資金のほとんどが預金されているような状況は好ましいとはいえません。
そこで・・・
 右矢印預かった金銭をどのように運用するかを予め決めておくこと
 右矢印不動産の運用ではなく、金銭運用がメインにならないようにすること
等が要請されますコアラ

特徴④投資契約が長期(無期限もあり得る)に及ぶ

「急にお金が必要になったので解約したいが、契約期限が無期限になっていて、解約できない!!
「リートのように市場(マーケット)がないので他の投資家にも売却できないガーン
私募ファンドは、やむを得ない事由がある限りを除き、原則として中途解約はできません。
株やリートの投資口のように、金融市場に上場されていないので、権利を他者に売却することも容易ではありませんドクロ
有期型のファンドの投資家は満期償還まで中途解約できないリスクを抱えることとなりますが、契約期限を無期限とする場合は、投資家がどのように投下資本の回収を行うのかが重要な問題となります。そこで・・・
 右矢印どのような場合に契約解除を認めるか、その要件と手続きを検討すること
 右矢印投資家に出資の払い戻し(元本の償還)の機会を提供するよう努めること
等が要請されますハムスター
その他にも長期間、多くの不動産の売買を想定するので、売買の判断や売買条件の決定において、投資委員会などを設けて利害関係のない外部の専門家を交えた投資の決定などを行うことが重要と考えられます。
次回では、対象不動産変更型契約において、法が要請するルールについて、もう少し詳細を見ていきたいと思いますウインク

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