
不動産ファンドの世界で「償還遅延」というキーワードが目に入ることがあります。
なんとも不安が掻き立てられる表現です…。
不動産特定共同事業法で「ファンドの償還遅延」は定義が存在するのでしょうか?
また、「運用期間の延長」とは異なるものでしょうか?
さらに、ファンド出資者への「契約満了日前日」や「契約満了日」における
「償還遅延連絡」は、法律および契約上問題は無いのでしょうか?
本日は、契約期間満了時に
不動産が売却できなかった場合の対応について、
不特法Q&Aをお届けします。
【質問】
不動産特定共同事業契約の契約期間が満了したのに、不動産が売れず、出資金が償還されません。これは「償還遅延」なのでしょうか?
【回答】
「償還遅延」とは、契約期間が終了しているのに、対象不動産の全部の売却等が完了しておらず、償還が実行されていない状態を指す、実務上の用語です。
【解説】
一見すると「遅れている」「対応に問題がある」と見えるかもしれませんが、この状態そのものは、不動産特定共同事業契約上は、清算過程の一環として想定されているものです。
とはいえ、本来は契約期間内に売却と償還を完了するのが原則です。

【約款ではどうなっている?】
契約期間が満了すると、契約は終了します(第10条1項(1))。
ただしその時点で対象不動産が売れていなければ、事業者は以下のような清算手続を行います(第10条2項)。
①不動産を換価処分
②債務を弁済
③全部の売却等が完了した日を最終の計算期日として、匿名組合損益を計算
④清算費用等を控除後、残余財産を出資割合に応じて分配
この清算処理に時間がかかる場合、実務上は「償還遅延」と呼ばれることがあります。
【なぜ償還遅延が起きるのか?】
多くの場合、不動産の売却活動のタイミングが遅れたことが原因です。
とくにマーケット環境が厳しい時期や、価格交渉が難航しているケースでは、希望価格での売却にこだわるあまり、契約期間内に処分が完了しないことがあります。
【アセットマネジャーの役割と責任】
だからこそ、不動産特定共同事業者(AM)には、計画的な売却活動が求められます。
契約期間の終盤に入ったら、早めに売却活動を開始する。
市況や販売状況を踏まえて、契約期間の延長が投資家の利益に資すると判断する場合は、必要に応じて契約期間の延長オプションを行使します(第9条2項)。
契約期間の延長を行う場合は、投資家に対して契約期間満了の1-2か月前までに書面又は電磁的方法による通知が必要です(モデル約款では「〇ヶ月前までに」と個別具体的事案に応じて記載する形式となっています)。最終的には、できるだけ高く売却し、投資家利益を最大化します。
この一連のプロセスは、AMの責任として非常に重要です。
【まとめ:償還遅延は想定されうるが、できるだけ避けるべき状況】
償還遅延とは、期間満了により、契約は終了しているものの、最終の計算期間の末日は到来していない状況です。
契約に基づく清算処理中とはいえ、償還遅延は投資家に不安を与える要因になります。
また、資金回収の遅れは、投資回転率や再投資機会にも影響します。
だからこそ、計画的な売却戦略と意思決定のタイミングがカギになります。
本日のQ&Aが、不特事業者皆様の契約管理やAM業務のご参考になれば幸いです。
不特法ファンドの運用や出口戦略でお困りの際は、どうぞお気軽にご相談ください!🤗