株式会社の代表取締役は小規模不動産特定共同事業の「業務管理者」になれるのか?

本日は、不動産特定共同事業の打合せのため東京都庁へ行ってきました。不動産特定共同事業の申請窓口は、宅建業新生の窓口と同じく都庁第2本庁舎の都市整備局にあります。知り合いの事業者様(宅建業)に遭遇することも多いのですが、今回もばったり。

ちょっとほっこりします。

 

 

さて、本日は「業務管理者」の専任性や独立性についてお話します。

 

「業務管理者」とは?

 

不動産特定共同事業者は、事務所毎に「業務管理者」を設置しなければなりません。

 

業務管理者は、宅地建物取引業における「宅地建物取引士」のような存在で、不動産特定共同事業の業務を管理・統括します。

不動産特定共同事業の契約成立前(第24条2項)・契約成立時(第25条2項)の書面、財産管理報告書には業務管理者が記名押印しなければならず(第28条3項)、違反した者は50万円以下の罰金が課されますハッ

 

 

業務管理者には資格要件があり、宅地建物取引主任士であることが前提です。

さらに次のA〜Dいずれかに該当する者でなければなりません。

A 不動産特定共同事業の業務に関し、3年以上の実務経験を有する者
  B 不動産コンサルティング技能登録者
  C ビル経営管理士
  D 不動産証券化協会認定マスター

 

このように「業務管理者」は高度な専門知識を持ち、不動産特定共同事業において重要な役割を担う必要不可欠な人材ですニコニコ

そのようなわけで、事業を行うには人材の確保が肝になります。

 

許可取得の相談で多いのが、会社の代表取締役が社内で唯一「業務管理者」としての資格要件を満たす、というパターンです。

 

宅地建物取引業でも、代表者が専任の宅地建物取引士を兼任することがよくあります。

知識も経験を蓄積した営業マンが、1人で独立・不動産会社を立ち上げ、徐々に成長して従業員も増え・・・という会社。

勉強熱心でビジネスをぐいぐい引っ張る代表者がコンサルティングマスターの登録もして「不動産ファンドも立ち上げよう!」、と相談にいらっしゃるのです。

 

「会社の代表者が業務管理者になることに問題があるの?」と疑問になるますよねキョロキョロ

 

不動産特定共同事業法において、会社の代表者が業務管理者を兼任することについて、特段の規定はありません。

ただし、代表者が業務管理者を兼任する場合は、会社のガバナンス態勢(営業部門と管理部門の分掌)がより厳しく審査されます。

 

不動産特定共同事業では、多くの出資者から資金を募り、集まったお金で不動産を運用するので、不動産の選定、取引価格、運用管理において、出資者の利益を害さぬよう、適正な業務の遂行が必要になります。利害関係者から通常よりも高い価格で仕入れたり、安い価格で売却したり、不適正な賃料で運用するのはNGです。

 

投資家の利益を保護するためには、事業者の業務の適正性を担保する必要があり、社内において、きちんと業務内容をチェックできる体制を整えることが求められます。

 

(不動産特定共同事業法施行規則第64条1項2号)

二 人的構成が次に掲げる全ての要件に該当すること。

イ 管理部門(法令その他の規則の遵守状況を管理し、その遵守を指導する部門をいう。ロにおいて同じ。)の責任者が定められ、法令その他の規則が遵守される体制が整っていること。

ロ 管理部門の責任者と小規模不動産特定共同事業に係る業務に係る部門の担当者又はその責任者が兼任していないこと

 

(これはあくまで、「小規模不動産特定共同事業」の基準であり、「不動産特定共同事業」でないことに注意です)

 

この条文は「ファンド事業を行う“営業部門”とコンプライアンスを担う“管理部門”をしっかり分けなさい」と言っています。

小規模事業の場合、「内部監査」までは求められませんが、営業部門の業務がきちんと法令を遵守しているか監視するための管理部門が必要ということですね。

 

監視するのであれば、互いに牽制を働かせるのであれば、営業部門と管理部門の地位は、少なくとも対等でなければいけません。

そして、営業部門のトップは「業務管理者」です。

 

代表取締役と会社従業員は雇用関係。

 

「社長がトップを務める営業部門に対して、従業員で構成される管理部門が対抗(監視)できるのだろうか?

 

会社ごとに状況は異なると思いますが、ワンマン企業で、社長の独裁色が強い組織において、スタッフは逆らえず、暴走を止められない・・・・・という事態が想像できなくもありません。

 

 

 

不動産ファンドでは、投資家から集めた資金で投資事業を行うのですから、営業部門とコンプラ・管理部門が互いに独立・牽制できる体制を整えなくてはなりません。

 

代表取締役が業務管理者であっても、「営業部門と管理部門の業務分掌・位置付けが明確化されている」、「取締役会が設置され、代表取締役の選任・解任を含めた会社の意思決定が取締役会で決定される」などガバナンスがきちんと働いている態勢であれば、申請上問題がないと考えられます。

 

ただし、許可権者の解釈・判断が分かれる部分でもあるので、登録にあたっての審査は厳しくなりますし、詳細な説明が求められることも多いです。

 

重要なのは、自社の組織体制を見直し、実態に沿った中でどのように分掌していくか、です。

自分たちの会社が、どのような事業(商品設計も含む)を展開したいか、組織つくりも含めてご相談くださいウインク

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