今週は、広島、岐阜、福岡の新規ホテルプロジェクトが動き始め、恵比寿と代官山の旅館業申請の話があり、不動産特定共同事業(FTK)の行政面談に、投資助言・代理業と住宅宿泊管理業のライセンス取得の相談があり、ばたばたとしています。
ソーシャルレンディングで不動産ファンド業務を手掛けておられる会社の方と情報交換などもいたしました。
金商法のスキームもそれぞれ特徴がありますが、不特(FTK)の商品設計の柔軟性に興味を持って下さり嬉しかったです。
足繁く通う都庁も紅葉して参りました☆
実物不動産を対象としたFTKファンド募集事業を始めるにあたり、注目を集めているのが、契約の申し込みから締結までをインターネット上で完結させる「クラウドファンディング」です。
「FTK(不特)事業に関して不動産クラウドファンディングを始めたい。具体的には、どのような体制を整備すればライセンスが取得できますか」
というご相談が多いので、本日は、クラウドファンディングを始めるために必要な要件について解説します
ライセンス取得には1に条文、2に条文
必要な要件については、不動産特定共同事業法(以下、「法」)第7条に「許可の基準」が次の通り規定されています。
(許可の基準)
電子取引業務を適確に遂行するために必要な体制が整備されているものであること。
これだけでは「必要な体制」とは一体どのようなものか分かりませんね
具体的には、法第31条の2に規定される3つの要件を満たすことを指しています。
(電子取引業務に関する特則)
第三十一条の二 電子取引業務を行う不動産特定共同事業者は、主務省令で定めるところにより、商号又は名称その他主務省令で定める事項を、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって主務省令で定めるものにより公表しなければならない。
2 電子取引業務を行う不動産特定共同事業者は、主務省令で定めるところにより、電子取引業務を適確に遂行するための業務管理体制を整備しなければならない。
3 電子取引業務を行う不動産特定共同事業者は、業務管理者名簿その他電子取引業務の相手方又は事業参加者の判断に重要な影響を与えるものとして主務省令で定める事項について、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって主務省令で定めるものにより、電子取引業務を行う期間及び電子取引業務に係る不動産特定共同事業の期間中、当該相手方又は事業参加者が閲覧することができる状態に置かなければならない。
この3つの要件を満たすことができれば、「電子取引業務を適確に遂行するために必要な体制が整備」されているということになります
では、さらに1つずつ内容を見ていきましょう。
まず、法第31条の2第1項について。
電子取引業務を行う不動産特定共同事業者は、主務省令で定めるところにより、商号又は名称その他主務省令で定める事項を、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって主務省令で定めるものにより公表しなければならない。
この「商号又は名称その他主務省令で定める事項」は、不動産特定共同事業法施行規則(以下、「規則」)の第53条に規定されており、具体的には電子取引業務(クラウドファンディング)を行う不動産特定共同事業者等の運営するホームページ(webサイト画面)上の「見やすい箇所」に次の項目を「明瞭かつ正確に」表示することとなります。
(表示項目記載例)
・会社名
・不動産特定共同事業許可(許可番号 ○○県知事 第○○号)
・代表者の氏名、事務所ごとの業務管理者の氏名
・本店又は主たる事務所の所在地
・電話番号
・不動産特定共同事業の種別 第○号事業(電子取引業務を行う。)
これは、クラウドファンディングのwebサイトのトップページなど、誰も(=公衆)が閲覧できる状態にする必要があります。
その他にも、業務管理者名簿も投資家が閲覧できる状態に置く必要がありますし(法第31条の2第3項)、不動産特定共同事業法電子取引業務ガイドラインの規定により「電子情報処理組織の管理に関する基本方針」と「クーリング・オフ」による契約解除の表示を、金融商品販売法の規定により策定した「勧誘方針」公表(金融商品販売法第9条第3項)します。また、個人情報保護法の規定による「個人情報保護指針(プライバシーポリシー)」や、「反社会的勢力に対する基本方針」の公表も推奨されます。
Webサイト上に何を表示すればよいのか、1つの条文にまとめて書かれているわけではなく、「この法律では●●について公表が必要」「あちらの法律では▲▲についての記載が必要」の集合体としてサイトが構成されているのです。
いろいろな不動産クラウドファンディングのWebサイトを見比べてみると、金商法に基づくクラウドファンディングサイトと、不特法に基づくものでは、当然表示されているものが異なります。
また、同じ不特法に基づくクラウドファンディングサイトでも、会社によって表示されているものが異なります。
これは、その事業者が許可申請を行った時点において求められる要件(=電子取引業務を適確に遂行するために必要な体制)が微妙に違った結果です。
2019年4月に「不動産特定共同事業法の電子取引業務のガイドライン」が策定されたので、以前より基準が明確になり(今までよりも厳しくなった部分も・・・・)申請は行いやすくなったと言えるでしょう
法第31条の2に規定される3つの要件のあと2つの要件の解説はまた次回に譲りたいと思います。
今後の不動産クラウドファンディングの広がりが期待されますね
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全国賃貸住宅新聞に、『不動産クラウドファンディング事業化のポイント』連載第3回の記事が掲載されました
不特法の商品設計の高さ(例:デット型、エクイティ型いずれも組成可)について解説しています。
ぜひ記事をお手に取り、事業のご参考としてください