先週は不特法のファンドセミナーで札幌から始まりました。
今年は暖冬でほとんど雪が降っていないと伺いましたが、当日は雪がちらつき、空気もキーンと冷えていました冬はおさかなも脂がのり美味しくなる季節です
宿泊したホテルのお部屋の窓から
会場事前準備中
慌ただしく東京に戻り、港区保健所でホテルの申請を2件
不動産特定共同事業法関連では、都庁との打合せが3件、事業者の方とクラウドファンディングのシステムの打合せ、LPSを活用した開発の相談、その他福岡でのマンション→ホテルへの用途変更の打合せ、渋谷で民泊セミナー登壇などなど・・・・今週も走り抜けました
不動産特定共同事業法の実務における「広告規制」とは?
さて、本日のブログでは、不動産特定共同事業者が守るべき「広告」のルールについて解説します。
不特商品の広告・宣伝をするとき、Webサイト・新聞・チラシ・商品パンフレット広告作成にあたり、『表示が必要なこと』や『表示してはならないこと』は決まっているのでしょうか
一般的なファンド商品に関する広告規制は、金融商品取引法(金商法)により規制されています。金商法には、広告に用いる文字の大きさなど、細かいルールが定められています。
しかし、不特法に基づくファンド(特例事業は除く)は、金商法に規定する「有価証券」から除外されているため、金商法の広告規制の適用対象となりません。
そこで、不特法では、第18条にて不動産特定共同事業者が守るべき独自の広告のルールを定めています。
そもそも「広告」とは何か?
前提として、「広告」とは何を指しているのでしょうか不特法には、広告の具体的な定義はなく、また、金融商品取引法のように「広告類似行為」の概念も設けられていません。
この点、国交省の監督指針(不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について)によると、「広告」には、勧誘資料やインターネットのホームページ、郵便、信書便、ファックス、電子メール、ビラ、パンフレット等による多数の者に対する情報提供が含まれるとされています。(該当性については、個別具体的な実態判断となります)
したがって、不特法では、金融商品取引法上の「広告」よりもその範囲を広くとらえており、金融商品取引法上の「広告類似行為」も「広告」の範囲に含める行政解釈となっています。
そのため、例えば複数の顧客に、不特法ファンド商品の案内を電子メールで一斉送信する行為も、不特法上の「広告」として規制対象になりますので注意しましょう
また、不特法は、第18条第2項において広告に必要な記載事項として下記2点を定めています。
・取引態様(契約当事者なのか、媒介又は代理人なのか)
・締結する不動産特定共同事業契約の種別
(広告の規制)
第十八条 不動産特定共同事業者は、宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前においては、当該工事に関し必要とされる都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第二十九条第一項又は第二項の許可、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六条第一項の確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地又は建物について不動産特定共同事業に関する広告をしてはならない。2 不動産特定共同事業者は、その行おうとする不動産特定共同事業に関する広告をするときは、自己が不動産特定共同事業契約の当事者となるか、若しくはその代理人となるか、又は不動産特定共同事業契約の締結の媒介を行うかの別及び当該不動産特定共同事業契約の第二条第三項各号に掲げる契約の種別を明示しなければならない。
3 不動産特定共同事業者は、その業務に関して広告をするときは、不動産取引による利益の見込みその他主務省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
第1項は広告の時期に関する制限です。土地の場合は開発許可等が、建物の場合は確認申請が下りた後でなければ広告をしてはならないとされています。
「え、確認申請が下りた後でないと広告できないの?」と驚かれるかもしれませんが、投資家からお金を集めた後に開発や建築ができなくなった、という事態を回避するため(すなわち、投資家保護のため)、このような規制が設けられています
また、広告時期の制限は、広告を行う相手方が特例投資家(プロ投資家)の場合でも適用除外はない点も要注意です。プロ投資家向けに行うファンド商品の取得勧誘の論点については、また次の機会にお話ししたいと思います
広告には通常、会社名(商号)や所在地、問合先や商品概要などを記載するので、上記2点のみ記載することはないと思われますが、法が求める広告の記載事項はこれだけです。少ないですね
広告に明示すべき事項はたった2つ。不当表示防止に関するルールはたくさん・・・・
他方、第3項にある通り、「広告において著しく事実に相違する又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない事項」は下記の通りたくさんあります。
(広告の規制)
第三十七条 法第十八条第三項の主務省令で定める事項は、次に掲げるものとする。
一 不動産特定共同事業者及び特例事業者の資力又は信用に関する事項
二 不動産特定共同事業の実績に関する事項
三 不動産取引の内容に関する事項
四 事業参加者に対し分配を行う収益又は利益の保証に関する事項
五 不動産特定共同事業契約の解除に関する事項
六 不動産取引から損失が生じた場合における当該損失の負担に関する事項
七 不動産取引に係る市況に関する事項
八 不動産特定共同事業契約に係る金銭の運用に関する事項
それほど良くないものをよく見せようという、いわゆる、誇大広告と言われるものですね。
例えば・・・・・・
申込者が支払うべき手数料、報酬、費用などが無料または実際よりも著しく低額であるかのように誤解させる表示
出資を伴う契約の場合で、元本の返還について保証されたものではない旨を表示していない。また、「元本保証」「元本保全」など元本の返還が保証されているかのような誤解を与える表示
許可を受けた商号と異なるものを用いた表示
取引の長所ばかりを強調し、短所が説明されていなかったり、目立ちにくい表示
インターネット広告画面上に表示する場合に、内容を確認できる閲覧表示時間が確保されていない
確実に利益を得られるかのように誤解させる表示
利回りを保証する表示や、損失の全部若しくは一部の負担を行う旨の(又は誤解させる)表示
申込みの期間、対象者数等を限定していないにもかかわらず、限定されていると誤解させるような表示
金融庁長官、国土交通大臣その他の公的機関が、不動産特定共同事業者を推薦し、又はその広告の内容を保証し、その商品の内容を事前審査しているかのように誤解させるような表示
根拠を示さずに、不動産特定共同事業に係る販売の実績や内容が他社よりも著しく優れている旨を掲げる表示
その他社会的に過剰宣伝であるとの批判を浴びるような表示
ファンド募集を成功させたいと思うと、ついつい広告に商品の良い面ばかり書いてしまう傾向にあるもの。
しかし、誇大広告と判断されるレベルになると法令に抵触していまうため、広告リリース前には、複数者によるチェックを行う体制を整えておきましょう。
私も顧問先から広告や商品概要パンフレット、契約書面の内容確認(事前レビュー)の依頼を受けることがありますが、加筆や修正を助言させていただくことが多いです。
やはり、商品や内部の事情をよく知る会社側と、外部の者が受ける印象はズレていることがあるようです。
不動産特定共同事業法上の広告のルールは以上となりますが、もちろん契約締結までには「契約成立前書面」で説明しなければならない重要事項がたくさんありますし、金融商品販売法に基づくリスクの説明、不当景品類及び不当表示防止法、屋外広告物法に基づく都道府県条例など留意すべきものは多くありますので、事前の論点整理をしっかり行いしましょう