先月の話となりますが、公益財団法人不動産流通推進センター様主催の不動産コンサルティングマスター向けのスペシャリティ講座にて、「空き家の利活用と不動産ファンドの基礎知識」の講演をさせて頂きました。
告知期間が2週間程度しかなく、受講者が集まるかドキドキしていたのですが、結果的に100名近い参加者がお越し下さいました。
センターと受講者の皆様に心より感謝・御礼申し上げます
******************************
不動産特定共同事業法を中心とした不動産クラウドファンディングのセミナーを企画しました
【不動産クラウドファンディング】法規制とファンド組成の基礎知識
【日時】2019年5月11日(土)14:00 〜 15:30
【会場】日本橋くるみ行政書士事務所(地図はこちら)
【料金】21,600円(税込)
【定員】5名(先着順)
******************************
投資家から小口の資金を集めて不動産の運用を行う、不動産ファンドのための法律「不動産特定共同事業法」
不動産特定共同事業法を活用した不動産クラウドファンディングのより一層の促進のため、国土交通省が更なる関係規則・通知の改正や、その他の関連する制度改善等を行うことを発表しました。
主な改正点は下記5点です。
①「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」の策定
②特例事業者の宅地建物取引業保証協会への加入解禁
③対象不動産変更型契約による長期・安定的な不動産クラウドファンディングへの参加を促進
④不動産特定共同事業への新設法人の参入要件の見直し
⑤不動産流通税の特例措置の延長・拡充
今回は、4月15日から施行される③不動産特定共同事業法施行規則の改正(対象不動産変更型契約に係る資金運用制限の緩和と基準の明確化)について解説します。今後、対象不動産変更型契約による長期・安定的な商品の提供が、不動産クラウドファンディングの活用により増えていくことが期待されます。
「まるでリート?』小規模不動産を対象とする長期・安定的な投資商品供給がねらい
投資家にとって魅力的な投資商品とはどのようなものでしょうか
短期間のうちに頻繁な売買を繰り返す投資スタイルを好む方もいるかと思いますが、一般投資家であれば、長期・安定的で保護が適切に図られた投資商品を好むケースが多いでしょう。
不動産特定共同事業では、長期保有を前提とした対象不動産変更型も制度も法律上は存在していましたが、実務上は1つの不動産のみを対象とし、運用期間も短め(1年~3年程度)で、物件を売却して償還する商品が主流でした。しかし、短期間で組成と償還を繰り返すよりも、市場の動向に沿いつつ、資産の入れ替えを行いながら長期・安定的な運用を可能とする対象不動産変更型契約の商品に対するニーズも存在します。
資産の入れ替えを行いながら継続的に存続する商品としては、リート(Real Estate Investment Trust、頭文字を取ってREIT)が有名です。
「リートと不動産特定共同事業ってどこが違うの」
という質問をよくいただきますが,リートは「投資信託と投資法人に関する法律」という法令に規定されている投資法人を使った不動産証券化のスキームである点で、主に組合を使って不動産を証券化する不動産特定共同事業とはスキーム構成がまったく異なります。
リートでは、投資対象は実物不動産に限らず、不動産信託受益権も含みます。また、資産の運用には投資運用業のライセンスが必要であるとともに、投資法人が発行する投資口の勧誘を行うには第1種金融商品取引業のライセンスが必要となるなど、許認可のハードル・コストが高いため、小規模な不動産を投資対象とするにはあまり向いていません
でも、世の中には規模はそこまで大きくなくとも、活用に値する既存建物がたくさんあります。
「もう少し許認可のハードル・コストを下げて、リートのような商品が作ることができたら、小規模不動産の活用も促進されるだろう」
と注目されたのが、今回の「対象不動産変更型」の不動産特定共同事業です
2019年4月の不動産特定共同事業法施行規則の改正により、対象不動産変更型ファンドにおける不動産売却後の金銭運用方法の柔軟化が行われました。リートでは商品化が難しい、中小規模の不動産を対象とするファンドを、相対的に許認可ハードル&維持コストが低い不動産特定共同事業の活用により促進することが狙いです。上場しているリート(J-RIET)と比較すると、金融市場の影響を受けにくく、価値が相対的に安定することも長期安定的な商品を好む投資家にとっては魅力的です。
長期保有を基本とする商品なので、相応な投資家保護も図る必要があります。
そこで、「対象不動産の追加取得の方針の明確化」や「取引価格の妥当性に関する事業参加者への説明」「対象不動産の入替えへの公正な第三者の関与等を義務付け」も同時に明確化され、事業者と投資家のバランスを取りつつ対象不動産変更型契約の活用を促進しています。
また、「対象不動産変更型」ファンドの魅力の一つとして、取引相場の上下に一喜一憂する必要がない点も挙げられています。
この点で「対象不動産変更型」ファンドは、近年機関投資家に人気の「私募リート」の個人向けバージョンともいえるでしょう
図表:上場リートと私募リートの比較(出所:国土交通省)
不動産を所有することよりも流動性が高く、金融商品よりも価値が安定しており、リートを作るよりもハードルが低く小規模不動産に適した、対象不動産変更型の商品の提供が充実していくことを期待しています