国交省「ESG投資を踏まえた不動産特定共同事業」検討会の中間とりまとめ

こんにちは、カピバラ好き行政書士の石井くるみですニコニコキラキラ大型連休も明け、少しずつ経済活動にも動きが出てきたように感じます。
外出自粛の中、「今後の社会や暮らしはどうなるのか、どうしていきたいか」を考えたり、仲間と議論する機会を持ちました。
今回のコロナをきっかけに「以前のように」ではなく、「さらに良い方向に」働き方やライフスタイルを見直すきっかけにしていきたいですね。
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さて、1994年の制定以来、経済社会の変化を受けて幾度の改正が行われてきた不動産特定共同事業(FTK)法。近年では、プロの投資家だけではなく、個人投資家による投資の促進が期待されています。
そのためには、事業者の一層のガバナンスの確保や、ブロックチェーン等の新技術へ対応、ESG・SDGなどの新しい投資基準の採用など、適切な不動産投資市場の整備を進めることが重要ですキラキラ
そこで、国土交通省は、「ESG投資を踏まえた不動産特定共同事業等検討会」を昨年9月に設置し、有識者による不動産特定共同事業の法規制や施策の方向性について検討が重ねられてきました。
充実した内容の議論が進められ、その「中間とりまとめ」が4月22日に策定・公表されたので、本ブログでも紹介いたしますニコニコ
今後の不動産ファンド、不動産特定共同事業は、どうあるべきなのか?読者の皆様と一緒に考えていきたいですルンルン

 

背景① 最近の法改正

・小規模不動産特定共同事業が創設された(平成29年改正)。

・電子取引業務(クラウドファンディング)によるオンラインでの契約締結が可能となった(平成29年法改正)。

・一定の要件の下、特例事業への一般投資家の参加が可能となった(平成29年法改正)。
・対象不動産変更型契約など商品を長期・安定的に運用するための環境を整備した(平成31年施行規則改正)

背景② 近年の不動産投資市場の動向

・近年の不動産特定共同事業の出資募集額は、年間約 1,000億円前後で推移。

・宅建業だけではなく、他業種(金融や IT 関連事業)を行う事業者の参入が増加。

・太陽光発電やホテル事業など、現物の不動産取引やサービス内容の多様化が広がっている。
・投資家が投資先企業に対して ESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮を求める動きが拡大している。
・ 安全性が高く、コストが低い「ブロックチェーン技術」を活用したサービスの拡大が期待されている。
出所:国土交通省「不動産証券化の実態調査」
我が国の重要な課題として、既存不動産(特に空き家・空き店舗等)再生・利活用促進が挙げられますが、近年の規制緩和により、不動産特定共同事業に参入する事業者数、ファンド件数は共に増加、地方の案件形成も含めて市場は活性化しつつありますウインク

今後の課題と取組の方向性

検討会では、不動産投資市場の発展を図るための課題と今後の取組の方向性について、次の通り取りまとめられました。

今までの方向性をさらに進めていくためのテーマは、「適切なガバナンスの確保と規制緩和」です。

規制緩和(アメ)と、投資家保護の観点からルール(ムチ)の追加をバランスよく行うことで、不動産特定共同事業に基づくファンドのさらなる活用が期待されます。
①新たな規制対象として「区分所有不動産投資契約」を含めることを検討
右矢印区分所有建物を投資家に販売し、一括借上げ転貸した上で、建物全体の賃料をプールして各投資家に分配する不動産投資事業は、共同事業性があり、投資家保護の必要性が高いため、不特法の規制対象とすべきとの議論が出ています。
新たな投資商品として現れたコンドミニアムホテル投資など・・・・この類型については、次のブログでも考察を深堀する予定ですニコニコ
②不動産特定共同事業におけるLPSの活用可能性を検討
右矢印以前『国交省「ESG投資を踏まえた不動産特定共同事業等検討会」でも注目される、LPSとLLPとは?』でも取り上げた通り、投資家が負う責任が有限責任であり、また、組合の存在が投棄されるLPS を不動産特定共同事業で活用することは一定のメリットがあると考えられます。
しかし、現行のLPS 法上、LPS は不動産への投資が制限されているため、投資対象に不動産を含めることの是非については、関係法令や関係省庁との調整を行う必要があり、その議論開始検討しようというものです。
「広告」の規制対象と範囲を拡充
右矢印現行法上、FTK事業者が行う広告には、「取引態様」と「契約種別」明示すべきとされています。
一方で、個人投資家への不動産投資に関するアンケートの結果では、架空業者からの商品勧誘や、リスク等説明を十分受けないまま契約を締結する事例が見られることから、広告にも「事業者の名称・許可(登録)番号」、「商品のリスク」等についての記載を義務づけることが検討されます。
「財産管理報告書」の記載事項の対象を追加
右矢印FTK事業者は投資家に対して定期定期に財産管理報告書を交付する義務があります。
近年、事業者自身がとファンド資金を集める1号事業者(倒産隔離が図られない)の参入が増えているため、財産管理報告書に、「不動産特定共同事業契約に係る財産の管理の状況」についてのみ記載するのではなく、「不動産特定共同事業以外の他業の実施状況」に関する情報開示が検討されています。
特例事業の一般投資家制限の緩和を検討
右矢印現行のFTK法上、特例事業のうち、工事費用が対象不動産の価格の1割を超えるような工事を実施するもの(いわゆる開発事業)は、投資家保護の観点から、一般投資家の投資を制限していますが、一方で、1号事業の場合にはそのような規制が設けられていません。
そこで、全体の規制枠組みを整えた上で、特例事業の一般投資家制限を一定程度(3割程度)まで緩和する方向で検討されています。
なお、その場合は、一般投資家が開発事業のリスクを十分に理解することができるよう、広告記載事項に、発生しうる事業のリスク等(コストオーバーランリスク、工事遅延リスク、デット返済期限の到来等)の記載など適切な情報提供を義務づけることも検討されています。
ESG情報の開示に関するガイダンス策定の検討
右矢印近年、欧米諸国をはじめとして、投資家が投資先に対して ESG(環境・社会・ガバナンス)への配慮を求める国際的な動きが拡大しており、我が国の不動産投資市場の持続的な成長を実現するためにも、ESG に配慮した投資を呼び込む必要があると考えられます。
そこで、ESG 情報開示に積極的に取り組むFTK事業者への参考となるよう、ESG の情報開示に関する資料(ガイダンスなど)を策定が検討されています。
⑦不動産に係る新技術の動向について、投資家保護や投資促進に必要な措置の実施を検討
右矢印ブロックチェーン技術を取り入れたトークンの活用のメリットとして、 「流通性の向上」「コンプライアンスの確保」「経理事務の負担軽減」「クロスボーダーの資金調達の可能性」などが挙げられますが、現段階では課題も多く存在することから、引き続き、市場の動向を見極める必要があるとされています。
非常に盛りだくさんな内容となっていますが、より詳細に興味を持たれる方は、こちらの「ESG投資を踏まえた不動産特定共同事業等検討会 中間とりまとめ」をご覧ください。
次回のブログではこの中でも、新たな規制対象として検討が進められている「区分所有不動産投資契約」について、内容を掘り下げます。
今までほとんど議論が行われてこなかった「賃貸型」のファンド事業が、今後広がるかも!? どうぞご期待くださいウインクキラキラ

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