こんにちは、カピバラ好き行政書士の石井くるみです
去る3月9日(月)、全国空き家再生セミナー2020第6回目(最終回)を開催いたしました。
新型肺炎の感染等の事情により会場開催を断念し、LIVE動画配信に切り替えたところ、300人以上の方にご視聴いただきました5時間もの長時間に渡りお付き合いくださった皆様には心より感謝・御礼を申し上げます
会場は主催者・登壇者のみでしてが、チャットを通じたリアルタイムの質問が飛び交い、
参加者みなさまとの一体感を感じることができ、感動しました
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さて、本日は前回のブログ「不動産特定共同事業で用いられる「匿名組合」と「任意組合」とは?」の続き、LPS(投資事業有限責任組合)とLLP(有限責任事業組合)の特徴と、今後の不動産ファンドへの活用可能性について解説いたします
③「LPS(投資事業有限責任組合)」とは
LPSとは、無限責任組合員(General Partner、以下GP)と有限責任組合員(Limited Partner、以下LP)により構成される組合で、「投資事業有限責任組合契約に関する法律」(LPS法)に規定されています。
投資に関する法律、ルールは、様々なものがありますね
GPはLPSの業務を執行し、組合の債務について無限責任を負いますが、LPはその出資額を限度とする有限責任のみを負います。
「みんなで出資から集めた資金で事業をして、儲けもみんなで分け合おう。責任は全部自分(GP)が持ちます。
登記や会計監査はきちんとやるし(後述)、LPの君たちの責任は出資額が上限だから心配しないで。」というイメージです。
LPSは、各当事者が出資を行い、共同でLPS法3条1項各号に掲げる事業の全部又は一部を営むことを約することにより、その効力を生じます。LPSは、法に定められている事業のみを行うことができます。
LPS法3条1項に掲げる事業
一 設立に際して発行される株式等の取得及び保有
二 設立後に発行する株式等の取得及び保有
三 指定有価証券の取得及び保有
四 金銭債権の取得及び保有
五 金銭の新たな貸付け
六 匿名組合契約の出資の持分又は信託受益権の取得及び保有
七 工業所有権又は著作権の取得及び保有
八 前各号の規定によりLPSが投資する事業者に対しての経営又は技術の指導
九 LPS又は任意組合に対する出資
十 前各号の事業に付随する事業であって、政令で定めるもの
十一 組合の事業の遂行を妨げない限度において行う事業であって、政令で定めるもの
十二 余裕金の運用
「不動産の取得及び保有」や「不動産の賃貸借」は対象事業に含まれていないため、現行法の下では、LPSを用いて不特法に基づくファンドを組成することはできません。
LPS契約が効力を生じたときは、2週間以内に一定の事項(組合の事業、名称、組合契約の効力発生日、組合の存続期間、GPの氏名又は名称及び住所、組合の事務所の所在場所等)を登記しなければなりません。LPSに登記が義務付けられたのは、LPSは組合員の一部(LP)が有限責任しか負わないため、そのことを取引先等が知ることができるようにするためです。
また、GPは、LPSの財務諸表等を作成し、当該財務諸表等を公認会計士又は監査法人の意見書と併せて、5年間主たる事務所に備え置かなければなりません。
組合財産は、任意組合の規定が準用されており、組合員の共有に属します。
また、LPSの組合員の税務上の取扱い(所得税・法人税におけるパス・スルー、相続・贈与時の財産評価)は、任意組合と同様とされています。
投資家の有限責任性の確保、財務諸表等に対する会計監査を義務付けといった点から、LPSは任意組合よりも投資家保護が図られます。
もし将来的に法改正がなされ、LPSの対象事業に「実物不動産の取得及び保有」が追加されれば、任意組合と同様の税メリットを享受できるLPS型ファンドを、不特法に基づき組成できるようになることが期待されます
④「LLP(有限責任事業組合)」とは
LLPは、有限責任組合員のみで構成される組合で、「有限責任事業組合に関する法律」(LLP法)により規定されています。
「③投資事業有限責任組合」と呼び名が似ているので、慣れないうちは混乱してしまいそうですね
LLPの業務の執行は、原則として総組合員の同意によって決定します。LPSと同様に、LLPも登記を行う必要があります。
「全員で出資した資金が尽きるまで一丸となって事業を行おう。出資者の立場は平等」というイメージです
LLPは各組合員が業務執行に参加しなければならないため、不特法2条3項1号に規定する不動産特定共同事業契約(各当事者が、出資を行い、その出資による共同の事業として、そのうちの一人又は数人の者にその業務の執行を委任して不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる収益の分配を行うことを約する契約)に該当しません。
国交省の「ESG投資を踏まえた不動産特定共同事業等検討会」では不特法におけるLLPの活用も議論されていますが、そもそもLLPを用いて行う実物不動産への投資事業は不特法の規制を受けないため、LLPの活用を想定した不特法等の改正の必要性は乏しいものと考えられます。
いかがでしたでしょうか
いずれの方法も特徴が異なるため、どれが優れている、劣っているというものではありません。行おうとする事業の内容や、投資家と営業者のスタンスなどを踏まえて、最適な方法を検討することとなります
しかし、投資家保護が強化されたLPSが不動産特定共同事業に活用できるようになれば、おもしろいのかと思います