こんにちは、カピバラ好き行政書士の石井くるみです。
前回のブログでは、リートを運営するトーセイグループが、不動産特定共同事業(FTK)に参入した理由について、
①リートの審査基準に満たない不動産を証券化すること
②成長著しいクラウドファンディング事業に取り組むこと
という2つの視点から解説しました。
本日はその続編として、トーセイが『特例事業(SPC)型』スキームを採用したが理由を、「投資家」メリットの観点から考察します
特例事業(SPC)型のファンドは『倒産隔離』が特徴
トーセイのFTKファンドの大きな特徴の1つに、国内初の個人投資家向けの特例事業(SPC)型スキームを採用した点が挙げられます。
2017年12月に施行された改正FTK法により投資契約の手続きがオンライン上で完結可能となり、このクラウドファンディングを活用したサービスが広がりを見せてきましたが、それらは全て「第1号事業ファンド」という、「FTK事業者が投資家から直接出資を受け、不動産を所有し、運用を行う」仕組みのファンドでした。
第1号事業ファンドは、許認可のハードルが比較的低く、不動産所有法人(SPC)の維持や不動産流通税などのコストがかからないという利点がある一方で、FTK事業者が倒産してしまうと、投資家は出資金の返還を受けられなくなるリスクがあります
すなわち、第1号事業ファンドは、投資家がFTK事業者の倒産リスクを負ってしまうという構造的な弱点があるのです。
例えば、建設業を営んでいるFTK事業者が、建設工事に失敗して倒産してしまった場合に、そのツケを全く関係ないファンドの投資家が払うなんて・・・・・と、不動産証券化に慣れている人にとっては、少なからず違和感を覚えるのではないでしょうか
この点について、トーセイのFTKファンドは、トーセイとは別に設立された『合同会社トレック・アース』が投資家との契約主体となり、不動産を保有し、運用を行います。
すると、もしトーセイが倒産しても、合同会社トレック・アースは存続するため、投資家はトーセイの倒産リスクから遮断されます。
このようにファンドを他者の倒産リスクから遮断することを『倒産隔離』といいます(下記の図表を参照)。
出所:(https://trec-funding.jp/contents/flow.html)
特例事業を行うにはどのような手続きが必要か?
特例事業を行おうとするSPCは、主務大臣に届出を行います(FTK法58条2項)。
特例事業者は宅地建物取引業者とみなされ、営業保証金の供託、受領手付金額の制限などの業務規制が課せられます(宅建業法第77条の3)。
特例事業のための不動産取引に係る業務及び契約締結の勧誘業務について、それぞれの業務の受託に関して許可を受けた不動産特定共同事業者に委託しなければならないとされており、不動産取引業務を受託する許可を受けた事業者を一般的に第三号事業者、契約契約の代理・媒介業務を受託する許可を受けた事業者を第四号事業者といいます。
特例事業者と締結した不動産特定共同事業契約に基づく権利は、通常の不動産特定共同事業契約に基づく権利と違って、金商法上の二項有価証券とされ(金商法2条2項5号ハ参照)、その取引について金商法の規制が適用されます。
すなわち、特例事業はFTK法と金商法の規制を同時に受けるため、例えばトーセイの特例事業FTKファンドでは、投資家との契約締結前に交付する書面を『契約締結前交付書面 兼 契約成立前交付書面』と題し、FTK法と金商法の両方の基準を満たすように作成しています。
FTK法の第四号事業者は、金商法上の二項有価証券を扱うため、第二種金融商品取引業者としての登録を受けている必要があり、いっそう許認可のハードルが高いと言えます。
個人向けの特例事業の普及につながるか
特例事業型の不動産特定共同事業は、今までは主に機関投資家などのプロ投資家を対象に活用されており、2017年の規制緩和で一部個人投資家の参加も可能となりましたが、実際は今までほとんど例がありませんでした。
それが、このTREC FUNDINGは、メインの投資家は一般の個人投資家。
しかもインターネット上から気軽に申込み可能となっているので、非常に投資のハードルが下がったサービスと言えます
実際にTREC FUNDINGの世田谷区の第1号案件は、申込開始から1時間も経たないうちに満額162,400,000円に達し、募集が締め切られたそうです。
もっとも、投資判断を行う上では倒産隔離以外にも考慮すべき点がたくさんあります。
特に重要なのは、自分のリスク許容度に合った投資を行うことです。
次回は、TREC1号 世田谷区用賀マンション投資ファンドのより具体的な仕組みと、リスク・リターンについて解説します