秋の4連休、みなさまはいかがお過ごしでしたか
私は埼玉県飯能市に出かけました。国内最大規模のFTK特例事業が行われたムーミンバレーパークを見ることが目的でしたが、道すがら山中ハイキングもしてとても気持ちよかったです
飯能市の巨大な山林と湖を切り拓く大規模開発を行った不動産証券化事業×ムーミンの話は、後日まとめたいと思います
************************************************
初の不動産特定共同事業(FTK)法に基づく個人投資家向け特例事業(SPC)型クラウドファンディングであるトーセイ株式会社のTREC FUNDING。
前2回のブログにおいて、その特徴を事業者の視点、投資家の視点からそれぞれ解説しました。
トーセイ(株)が不動産特定共同事業に参入! なぜREITではなく『FTK』なのか?
トーセイ不特法ファンドを解説! 特例事業(SPC型)の投資家メリット『倒産隔離』
メインターゲットを個人の一般投資家として注目を集めたTREC FUNDINGの世田谷区の第1号案件は、申込開始から1時間も経たないうちに満額162,400,000円が完売したそうです。
しかし、投資判断を行う上で重要なのは、リスク・リターンのバランスと、自分の志向に合った投資を行うことです。
本日は、TREC1号 世田谷区用賀マンション投資ファンドのより具体的な仕組みと、リスク・リターンについて解説します
事業者との倒産隔離が確保される特例事業(SPC型ファンド)
特例事業(SPC)型ファンドの特徴をおさらいしつつ、TREC1号「世田谷区用賀マンション投資ファンド」の概要を見てみましょう。
<ファンドの概要>
建物所在地 東京都世田谷区用賀三丁目12番16号クリスタルグローブマンション
構 造 鉄筋RC構造、5階建(延べ床758㎡)、1990年築
契約形態 匿名組合型(不特法2条3項2号)
優先劣後 なし
募集総額 162,400,000円
取得金額 252,590,000円
予定分配率(年率)7.00%
予定運用期間 3年
レバレッジ(借入)あり(120,000,000円)
最低出資口数 10口(10万円)
配 当 年2回
途中解約 不可
<投資スキームの概要>
①投資家は、FTK法上の特例事業者である合同会社トレック・アース(SPC)との間で、それぞれ匿名組合契約を締結し、金銭出資を行う。
②SPCは、投資家+トーセイ(株)+金融機関から調達するノンリコースローンを合わせた資金で、投資対象「クリスタルグローブマンション」の土地及び建物の所有権を取得する。
③一定期間(3年を想定)運用後、売却し、金融機関へのローンを返済、投資家に元本を償還してファンドを清算する。
SPCは不動産を所有することを専らの目的とし、不動産の運用や投資家の募集といったファンド運営に必要な業務は、FTK事業者であるトーセイ(株)に業務委託をする形となります(下図参照)。
SPCはFTK事業者とは完全に別の会社であるため、もしFTK事業者が倒産しても、その債権者はSPCが所有する不動産に手を出すことはできません(倒産隔離)
SPCは別のFTK事業者に業務委託することで、ファンド事業を継続することが可能であり、結果として投資家の保護が図られます。
優先劣後なしの『エクイティファンド』
気になるリターンについて、予定利回りは、年7%(単利)となっています。
ただし、このファンドは優先劣後構造を採用していないので、利益だけでなく『損失』も、出資割合に応じて平等に分配されることが特徴です。
クラウドファンディングで募集が行われるFTKファンドの多くは優先劣後構造を採用しているので、優先出資者への配当は劣後出資者より優先されますが(劣後出資の部分が元本毀損時のクッションになる)、このファンドはそのような仕組みは取られていません
期中の賃料収入は10口(10万円)あたり2,230円ですので、インカムゲインに基づく年利回りは約2.2%です。
年7%の予定利回りは、年2.2%のインカムゲインに加え、年平均で4.8%のキャピタルゲインを加えて算出された予想値となります。
キャピタルゲインは、2億5259万円で購入した物件が、3年後に2億8850万円(約14%UP)で売却する前提で計算されています(下表参照)。
このように、物件の売却損益(キャピタルゲイン&ロス)が投資家に直接帰属するタイプのファンドを『エクイティ型』といいます。
(逆に、最近流行している優先劣後構造を採用したファンドは、物件の売却損は劣後出資者が負担してくれる代わりに、物件の売却益が投資家に帰属することもないので、固定リターンである貸付金や社債に似たエコノミーを持つという意味で『デット型』といいます)。
上述のキャピタルゲインの予想に関して、①鑑定評価額は3億200万円であること、②3年の間にリノベーション前の低い賃料で契約したテナントが、高い賃料のテナントに置き換わることで物件の収益力が増すことが期待されること等を考慮すると、3年後に2億8850万円で売却できる可能性も十分に考えられると思いますが、コロナショックの例にもあるとおり、将来の予想は誰にも分りません。
将来の物件の売却価額のような不確実性(リスク)を理解したうえで投資を行い、もし将来に物件価格が下落して損失が生じた場合にはしっかりと損失を負担することが投資における『自己責任の原則』となります。
金融機関からの借入(レバレッジ)により、リスクとリターンが共に増幅
FTKファンド投資には常に元本が毀損するリスクがありますが、このファンドでは金融機関からの借入(ノンリコースローン)を調達しているため、レバレッジ効果によりリターンとともに元本毀損のリスクも増幅している点も理解しておく必要があります。
例えば、3億円の物件でLTV50%(借入金1億5000万円)のノンリコースローンを調達したファンドにおいて、不動産価格が当初から20%下落し2億4000万円で売却したケースを考えてみましょう。
ここで、金融機関からの借入(ノンリコースローン)は対象不動産に抵当権を設定しているため、投資家が持つ本匿名組合出資に係る権利等よりも対象不動産の処分により得られた資金からの弁済を優先的に受けます。換言すれば、ファンドの投資家は金融機関(レンダー)よりも弁済順位が劣後します。
すると、物件の売却で得られた2億4000万円の資金は、まず1億5000万円のノンリコースローンの弁済に優先的に充てられます。
そして、残った9000万円が、ファンドの出資者に支払われます。
ファンドの元本1億5000万円に対して、投資家はその60%(9000万円÷1億5000万円)しか受け取りができなかったことになります。
物件価格の値下がり幅は20%でしたが、元本の毀損幅は40%に増幅している ・・・ これがレバレッジ効果のリスクの側面です
逆に、物件価格が20%上昇し、3億6000万円で売却できた場合は、投資家のリターンは+40%となります
(読者の皆さんがご自身で計算してみてください)
まとめると、最近流行している優先劣後構造の『デット型』ファンドに比べると、優先劣後構造を採用せず、借入によるレバレッジを効かせた本ファンドは、ハイリスク・ハイリターンな『エクイティ型』ファンド商品であると位置付けられます
ファンドの仕組みと、リスク・リターンをよく理解したうえで出資を行いましょう