早いもので、今年も残すところ、あと2週間。
住宅宿泊事業法(新法)が施行されたこの1年は、あっという間に過ぎ去った、という感覚です。そんな新法施行から半年後の12月12日、日経新聞朝刊で民泊特集が組まれました。
特集の中で、民泊新法の上乗せ規制(住宅宿泊事業の実施を制限する条例等)について、次のとおりコメントさせていただきました
上乗せ規制 検証必要
石井くるみ氏(行政書士) 年180日の日数上限がある新法の物件のほか、上限のない旅館業法の許可を目指す民泊が増えた。新法は構造設備などのハードルが低く、空き家活用にも適しているが届け出手続きの煩雑さが難点だ。自治体は慣れない届け出者を支援する姿勢で臨んでほしい。上乗せ規制は地域の実情を考慮のうえ過度でないか検証が大切だ。
新法は、大きなコストをかけることなく、地方部の空き家対策等に活用できる優れた制度ですが、その届出手続きが煩雑なため、一般の個人では書類を揃えるだけでも一苦労です
また、自治体によっては『上乗せ規制』として、平日の民泊営業を禁止したり、届出に際して追加の書類提出(例:建築チェックリスト)を要求している例があります。
前者の日数制限は、住宅宿泊事業法で認められた制限ではあるものの、観光立国の推進という法の趣旨に鑑み、「民泊に起因する事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるとき」に、「合理的に必要と認められる限度において」、実施できることとされています。
(条例による住宅宿泊事業の実施の制限)
第十八条 都道府県(第六十八条第一項の規定により同項に規定する住宅宿泊事業等関係行政事務を処理する保健所設置市等の区域にあっては、当該保健所設置市等)は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる。
他方、届出に際して、法令に定めのない追加書類の提出を強制する(又は届出を受理しない)自治体職員がいたら、その職員は法令(行政手続法)違反を犯しています。
行政手続法における「届出」の作法
届出者が任意で建築チェックリスト等の書類を提出するのはよいですが、仮に法令に定めのない追加書類を添付しなかった場合でも、届出の効力は有効であり、行政庁は速やかに届出番号の発行等、必要な手続を行わなければなりません。
その根拠として、行政手続法37条と、総務省が公表しているQ&Aを見てみましょう。
(届出)
第三十七条 届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。
総務省 行政手続法Q&A
Q24 届出をしようとしたら、役所が受け取らないと言っているのですが、どうしたらいいですか?
A 届出とは、役所に対して一定の事項を通知する行為であって、そのことが法令で義務付けられているものです(そのため、役所からの処分(例えば、許可をする/許可しない)を前提としている「申請」は除かれます。)。
届出に必要な書類がそろっている、定められた様式で届出が記入されているなど、法令が定める形式上の要件を満たす届出が提出先とされている役所に届いたときは、「届出をする」という手続上の義務は完了したことになります。
したがって、役所は、形式上の要件を満たす届出が正しい提出先に到達したら、その届出がなかったものとして取り扱うこと(例えば、届出を受け取らない、返却するなど)はできませんので、その旨を役所に説明してください。
ただし、形式上の要件を満たす届出が正しい提出先に到達しても、その届出の内容に誤りがある場合など、その届出の根拠となる法令の要件を満たしていないものは、届出としての法律的な効果は発生しません。
行政手続法を含む法令に則り、各自治体は、行政手続きに不慣れな届出者を支援する姿勢で臨むべきと言えるでしょう。届出手続きに対する自治体のサポートを通じて、適法な民泊が増加していくことに期待したいです