住宅宿泊事業法が施行された6月15日以後、無許可・無届の民泊サイトはAirbnbなど大手民泊仲介サイトでの宿泊者募集ができなくなり、同サイトにおける民泊施設の掲載件数は激減しました。その後、旅館業の申請や住宅宿泊事業の届出が順次行われ、11月16日には届出件数は11,719件(申請数)を突破。再び民泊市場は成長を続けています。
しかし、一部の民泊仲介サイトでは未届出の物件が掲載されていたり、旅館業法の許可がない物件が掲載されていたりする等の問題が起きています。また、SNSや自社サイトなど、民泊仲介サイトを介さない方法で無許可・無届の民泊事業を続けている事業者も依然として存在します。
私の行政書士事務所にも、マンションの所有者や同建物内の区分所有者から、このような違法民泊の相談が増加しています。民泊が社会一般的に認知されるようになったにもかかわらず、依然として違法営業を継続する事業者との対峙は一筋縄ではいかない印象です。
そのような中、観光庁は健全な民泊サービスの普及に向けて違法性が疑われる民泊物件の特定を容易にする新システムを導入する方向性を2019年度の予算概算要求で明らかにしました。
(観光庁関係予算概要求概要より)
新システムでは、無登録の民泊仲介サイトより民泊物件データを収集し住所などの詳細な情報を集約してリスト化します。住宅宿泊事業法の届出物件データと照合し、物件を抽出することで、違法性が疑われる民泊物件を自治体が特定しやすくする仕組みです。
海外の無登録の仲介業者は住宅宿泊事業法の適用対象外であるため、国内にいる物件の所有者や管理者に対して自治体などが直接指導する必要がありますが、何といっても、無許可・無届の民泊物件は特定困難であることがいちばんの課題です。
騒音など近隣住民の苦情を受け、保健所職員が訪問しても、そこに滞在しているのは事情を知らない旅行者で、事業者は滞在していません。事業者を特定しても「友達を泊めているだけ」「短気賃貸借契約を結んでいる」などと言い逃れをするケースもあります。
また、宿泊客を募るサイト上では、詳しい所在地が公表されていないことが多く、内装写真などから特定を進めるしかありません。違法事業者もそれを心得ているので、物件を特定しにくい写真しか掲載しません。このような事業者とのいたちごっこが繰り広げられ、1つの物件の違法性を洗い出すには相当の時間と労力がかかります。
観光庁は、2019年度はシステムの基本性能の検討や構築・調整などを進め、東京五輪が開催される2020年度には試験的に複数の自治体で導入し本格展開に向けた準備を進める予定です。民泊市場の健全な発展に向けて、正しくルールを守る者が気持ちよくビジネスを展開できる環境整備が急がれます。